第3話「あの日の先輩……月美×夜宵」
私には一時期、憧れの先輩がいた。日和姉さんには及ばないが、大学生活においてかなり助けて貰った先輩だった。あの人はどうしているのだろうと、たまに考えるくらいには印象に残る人だ。
「まさか、月美ちゃんに出会うとはね、事実は小説よりなんとやらだ」
いや、私としては笑いながらそう言う貴方の方がよっぽどその通りだ、と言いそうになるのをこらえ、苦笑で返す。
私の大学時代の憧れ、夜宵先輩は、私と同年代ほどの女性と手を恋人のように握り合わせ、洋服屋であれこれと服を見ていた。それも、ペアルックの物をである。
「先輩は先輩で楽しそうですね。友人ですか」
引きつった頬を戻すことが出来ないまま聞いてみる。いや聞くまでもなくそういうアレなんだろうが、まあ、念の為。
「私は、夜宵のパートナーです!」
そう力強く訴えたのは夜宵先輩、ではなく、隣にくっついてる私と同年代ほどの女性だった。私の質問に怒っているのか、少し目線に敵意を感じる。
「暁美……まあ、そういう事なんだ。月美は、日和と上手くやってる?」
夜宵先輩は罰が悪そうに話題を変える。上手く切り抜けようという意図が感じられ、特に追求するつもりもないのでその話題に乗ることにする。
「まあ、上手くやってます。いや、上手くあしらわれてます、かな」
その結果にとってそれなりに悪くない関係になれているのだから、結構上手くはやっているのだろう。
「ああ、日和はそういうの上手いもんね。じゃあ、また機会があったら身の上話でもしようか」
夜宵先輩は早口にそう言うと、暁美と呼んだ隣の女性に謝りながら、買い物に戻る。一体なんの時間だったのだろう。とりあえず、ペアルックもいいなと思ったので、一組買って姉さんに渡してみようか。
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