11話「100%の価値」

「君の一番になれても、100%にはなれないって、知っている」

 校舎裏、目を逸らして私を見ようとしない彼女に、私は諦めの言葉を告げる。

「同性じゃ、心から愛せないんだよね。分かってた」

 それでも、告白したのは彼女なのに。私は、愛を与えられ、身勝手に奪われたのだ。

「私は、本気になったよ。一番で、100%だった。今だって、貴方の事が!」

「でも、きっとまた忘れるよ。私に、流されたみたいに」

 私がまくし立てるのを聞いて、彼女は笑みのない顔でじっと睨めつける。私が、流される?

「開き直るのは悪いけど、そういうつもりじゃなくて、そこまで怒らなくても、貴方は平気だって、言いたくてね」

「もちろん私は貴方が一番だけど、それでも100%には出来ないの」

 私は何も言えなかった。彼女の態度にでは無い。私の、本性に。

 私は、既に彼女を想えていない。私の中に、彼女への愛が感じられないのだ。

「私が100%になれないのは、貴方の100%が浅いからだよ」

 私が、悪かったのか。私の100%は、誰にでも作れるのか。

「ごめんね、貴方が悪いわけじゃないけど、私は、貴方を100%には出来ないから」

 私だって、もはや、100%では無い。

「せめて、友達でいよう。そしたら、きっと変われるかもしれないから」

 それでも良かったが、きっともう、今には戻れないのだろうと、一人納得してしまった。

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