後日譚②(終)「ケンカップルの年越し」
「お年玉を貰うのは当然の権利だと思う」
二人して惰眠を貪る元日の昼下がり。愛優は至って真剣な口調で私に向けて訴えかける。
「ほら、芽衣は私より年上じゃん。年上は、お年玉をあげる立場でしょ」
ふんとしてやったように続けるものだから、私もカチンときてしまった。
「お年玉は催促されて渡すものじゃなくて、子供に大人が自ら与えるものだからアンタには無し」
偉そうに言ってゴロゴロと寝返りを打つ。そもそもたかだか1歳差で何を言っているんだか。呆れてしまう。
「何その言い方。正月ムード台無しなんだけど。少しくらいくれたっていいじゃん。百円とかさ」
私のほうの布団まで来て多い被さってくると、愛優は頬を膨らませて言ってきた。
「あんたみたいな奴には百円もあげたくないって言ってるの!」
睨みをきかせる愛優に対して私も睨み返しながら顔を近付ける。
この様子だと、また喧嘩が始まるようだが。
「何その言い方! もう許せない――!」
そのセリフを途中で止めるように、唇を唇で塞ぐ。しばらく愛優が慌てるが、落ち着くまで私はそのまま続けた。
「芽衣、一体何を……」
絶句してしまう愛優に対して、私はニヤリと笑みを返す。
「ほら、お年玉あげたんだけど、嫌だった?」
「べっ、つに……嫌ではないけど……」
頬を赤らめる愛優は、やっぱり可愛いと思うのだ。
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