後日譚②(終)「同棲二人の年越し」
「あけましておめでとうございます。今年も、いえ、今年からよろしくお願いします」
年明けの朝、私は暁美の父親に三つ指立てて丁寧に新年の挨拶を済ます。新年の挨拶だけでなく、暁美をいただく挨拶という意味合いもあるのだ。深く挨拶するに越したことはないだろう。
「そんなに畏まらなくてもいいのに。まあ、悪い人に当たっていないのがよく分かって嬉しいんだけどね。はい、お雑煮」
キッチンからお雑煮を運ぶと、母親は笑いながら話す。まあ、そんな風に思ってくれるなら、嬉しいものだ。
「あ、夜宵おはよう〜」
欠伸をしながら暁美が起きてくる。久しぶりの実家で安心したのか、いつも以上に寝ぼけているようで、私を見つけると抱きついてくる。
「大好き……今年も一緒だよ」
どうやら両親の前だとは思っていないようで、私に抱きしめて離そうとしない。
「あの、夜宵さん……?」
私を問い詰めるような眼差しで母親が言う。私にはなんの悪意もないし、暁美が寝ぼけているのが悪いのだが、どうしようか。
「普段はもうちょっと寝起きもすっきりですし、節操無しではないんですけどね……」
弁解しながら暁美をなだめて離れさせる。
「まあ、程々の付き合いにしなさい」
少しだけ先行きが不安な年明けだった。
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