後日譚②(終)「双子の年越し」

「年越しそば、トッピングは?」

『えび天かき揚げネギたくさん!』

 大晦日の夜、私は年越しそばを作り、盛りつけをしている。やはり双子とは気が合うものらしく、試しにトッピングについて聞くと、私達は一字一句間違えずに同じセリフを唱えた。

「できたよ、一緒に食べようか」

 テーブルに2杯並べると、月美と向き合って席に着く。23時半、新年までもう30分だけになってしまった。

「色々あったね。特に秋頃から」

 蕎麦をすすりながら、今年を振り返る。と言っても、月美が言うように秋からが印象深すぎて、あまり他に何があったか曖昧だが。

「まさか妹が恋人に昇格するとはね」

 と、ここまで言って思い至る。そうか、今私は恋人と二人きりで、年を越そうとしているのか。それは、なんというか、くすぐったい気持ちになる。

「日和、愛してるよ」

 月美は一度食べる手を止めて、うっとりと私を見つめながら呟く。

「もう、蕎麦伸びるから早く食べて」

 私が恥じらいながらそう誤魔化すと、月美は仕方ないなと蕎麦を食べ進める。

 来年、私達はどうなるのだろうか。例えば、恋人としてもっと凄いこと、したり?

「日和、伸びるよ?」

 私がぼんやり考えると、月美がそれを指摘する。人の事を言えないな、と私も食べ進める。

 来年の事を言えば鬼が笑うとも言うし。でも、夢を見たって、少しくらいいいか。

「来年もよろしくね、月美」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る