火曜日「幼馴染百合」

第1話「幼馴染だから」

「夏海、キスしてもいい?」

 そう聞いたのは、私の幼馴染雪花で、場所は放課後の教室。私は居残りで課題をやらされていた。

「別に、今する必要なくない? そもそもなんでする必要があるんだ」

 面倒臭いし、そもそも私は課題をしてるのに。それに、そういうのは、恋人同士がするものではないのだろうか。

「だって、幼馴染だから?」

 雪花は首をかしげ、とぼけるように言う。いや、幼馴染はキスをするのか? 当然私にはそういう疑問が浮かんだが、生憎統計など取られていないので、否定も肯定もできない。

「邪魔にならないなら、いいよ」

 とりあえず私は課題を優先しなければならないので、適当に流しながら言う。最もらしいようだが、そもそも課題を先にやっていなかった私が悪いので、全く最もではないのだが。

「じゃあ、いただきます」

 やけに丁重な物言いで、雪花はそう言うと、私は耳にしっとりとした刺激を感じた。

「ひゃっ! 雪花、な、なんで耳に」

 あまりにも急で、感覚の鋭敏な場所に口付けを落とされたのもあって、私は頬を真っ赤にして混乱してしまった。なんで、こんな、雪花にはいつも遊ばれてしまうのだろうか。

「ふふっ、真っ赤な夏海、可愛いね」

 私は、何も言い返せなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る