後日譚①「双子のクリスマス」
職場から帰る街並みは、煌びやかなイルミネーションで彩られていた。そう、今日はクリスマスだ。私もこれから月美の為に予約したケーキを取りに行かなくては。
「いらっしゃいませ……?」
何故か疑問形の店員に首を傾げ、予約したケーキを受け取ろうと話す。
「双葉日和で注文したブッシュドノエルを受け取りたいのですが」
私が告げると、店員はまた首を傾げてしまう。名簿を見て、余計に混乱している店員に、ムッとしてしまう。
ため息をついて店を見回すと、私は店員の混乱の理由を理解した。
「ああ、月美!」
「日和? なんでいるの?」
隣のカウンターに、月美が居たのだ。そっくりな2人がほぼ同時に来店しては、確かに混乱するか。店員さんも、大変だな。
と、考えている場合ではない。私たち双子の考えることだ。店まで同じなら、おそらく、いくとこまで全部同じだろう。
「お待たせしました。ブッシュドノエルになります」
やっぱりだ。隣のカウンターから聞こえたケーキの名前が、私の予約したそれと全く同じだったのだ。2人用のケーキも2つ買えば4人用だ。
「今日の夕飯はケーキね」
店を出る時に、月美に呟く。合流ついでに2人で歩く帰り道は、少しだけ心が弾む。
「まあ、好きなケーキだから、大丈夫でしょ」
そう言いながら、月美は私の方に手を伸ばす。なるほど、恋人だから、繋ごうと。たまにはいいか。私も繋ぎたいし。
「日和、メリークリスマス」
私が手を繋ぐと、月美は嬉しそうにそう言った。
「うん、メリークリスマス」
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