第10話「カーテンコール①……高校生組」

「やっと色々終わったね〜。皆幸せじゃん!」

 これまでの私達の出来事を見せられ、夏海先輩は朗らかにそう言った。ここが何処か、何をするのか、そういったことはあまり考えてはいけないのだろう。カーテンコールの不思議な世界ということだ。

「そうだね。知らない人ばっかりだけど、夏海は結構色んな人と繋がってるんだね」

 雪花は少しつまらなそうに話す。交際相手の顔が広いことにヤキモチを焼いているのだろうか。だとしたら、正直私も怒っていいだろう。

「私なんて、先輩二人のカップルに挟まれてどうしたらいいか分からないんですけど!」

 カーテンコールと題されたこの場に、明季の姿はない。どうやら高校生組であるこの三人で構成されているらしい。居づらい事この上ない。

「まあまあ、9話目のハル、可愛かったよ?」

 私を撫でる雪花先輩の手は、いつもは冷え性だと言って冷たいのに、少し暖かかった。と、思えばなんのことは無い。夏海と繋いでいた手なのだ。

「じゃなくて、9話目の話はやめてください! 私のキャラ崩壊です!」

 まったく羨ましい二人だ。ちょっと悩んで、告白したらそのまま結ばれたではないか。

「私なんて、私なんて告白を忘れられてたんですよ? いじけたくもなります」

 言えば言うほど先輩たちを困らせる事は分かっているのに、今までの苦労が溢れ出して止まらない。ああ、余裕ぶっても私はまだ幼いのだなと、自覚させられる。

「さあ、そろそろカーテンコールだよ!」

 夏海は、雪花と共にいじける私の手も取って、3人で並ぶように誘導する。これで、私たちの物語は一応の幕が下りるのだ。ここから先は、少しだけ見せる後日譚。本編は、もう終わってる。

「5組各10話でお見せした、私たちの物語、ご覧頂きありがとうございました」

 雪花先輩は凛々しい声で、何処かで私たちを見る誰かに話す。

「これでこの話は一旦幕切れ。ですがあと少しだけ、私たちの後日譚をお楽しみください」

 夏海先輩は、雪花先輩の言葉に続けて、快活に力強く訴えかける。

 次は、私だ。

「そして、ご覧頂いた全ての方に、物語のような幸せな恋が、実りますように。ありがとうございました!」

 こんな結びじゃ、ありきたりだろうか? なんて、考えながらも、3人で微笑み合う。私たちの、カーテンコールだ。

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