第9話「反転」

 私の告白が終わって、部屋には沈黙が訪れた。ハルは、中々その口を開かない。やはり、私の想いは届かないのだろうか。

 そう思って手を肩から離そうとした時、ハルは私の手を掴んで肩に密着させた。

「私は、散々からかった。意地悪もした。誑かして、好意を弄んだ。私は、明季の好意に応えられない。応える権利、無い」

 今にも泣きそうになりながら、ハルは無理だとこぼす。あまりに辛そうで、見ていられなかった。まったく、やっぱり歳上がリードしなくては。

「じゃあ、こうしよう」

 一度肩から無理に手を離し、一度深呼吸をする。いったいハルはどんな気持ちでこんな事をしていたのだろう。そう思いながら、ハルの顎を片手で少しあげる。

「私が貰ってあげるの。まだ分からない?」

 格好つくように、とびきり目線を強く利かせ、ハルの眼差しを射抜く。いつもと逆の構図。我ながら、こういうのは向いていないなと悟る。

 しかし、ハルは違ったようで……。

「は、はい……お願いします……」

 顔を真っ赤に染め上げ、震える声でそう返す。案外自分でするのは楽でも私からされるのは弱いらしく、すぐに顔を隠してうんうん唸ってしまう。

「急にかっこよくなるなんて、ずるいです」

 しばらくして、そう返す姿に、私は苦笑した。

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