第9話「あの頃の好きを本物に」

「夏海から誘うなんて、珍しいじゃん」

 昼休み、普段は雪花から私の教室に来るのを、私が先に雪花の教室まで行き、雪花を屋上まで呼び付けた。

「流石に今は寒いね。教室で食べようよ」

 そう言って両腕を抱く雪花の正面を向き、覚悟を決める。告白を、しなくては。

「大丈夫、すぐに戻るよ。少しだけ、話したいことがあってね」

 思いのほかスルスルと出る言葉に、少しだけ安堵する。今なら、このまま全部言えそうだ。雪花は首をかしげ、私の話に興味を示している。

「わざわざ屋上に来るんだから、大事な話なんだよね。何かな」

 緊張と期待にキョロキョロと視線が落ち着かない雪花を見て、笑みがこぼれる。やっぱり、雪花はとびきり可愛い。見た目も、性格も、仕草も、全部好きだ。その思いを、伝えよう。あの頃の好きを、本物にしよう。

「私は、雪花の事が好き。幼馴染として以上に、一生のパートナーとして、一緒に居たい。本気で、ずっと一緒に居たい」

 言った。言ってしまったんだ。自分の想いを、包み隠さず全部、雪花に伝えた。

 まだだ、プレゼントを出さなくては。そう思い直し、制服のポケットに入っている箱を出す。

「受け入れてくれるなら、これを付けてくれないかな」

 そう言って私は箱を開ける。バイト代をつぎ込んで買ったペアのネックレス。大して高いわけでも、宝石をあしらった訳でもないけど、繋がりを持つようで、一緒に付けたかった。

 雪花は、驚きのあまりじっと静止してしまっている。次に口を開いた時、なんと帰ってくるのだろう。重すぎるだろうか。色々なことが心配で仕方がない。

 そして、雪花の口が開く――。

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