第8話「足踏みだけじゃ」
しかしどうして、自覚した想いは歯止めが効かないのだろう。忘れているからと黙っていようにも、私の心は悶々として足踏みだけでいることを許してくれない。雪花が欲しい。抱きしめて独り占めしたい。雪花だって、私に少なからず好意があるはずなのだ。
いっそ、言ってしまおうか。でも、それで雪花に嫌われたら? 今までの全てが、冗談だったら?
「ダメだな……足踏みだけじゃ」
新しい気持ちで学校に行き、そして帰って一息。むしろ私は、悩み続けていた。遠慮なく駆けていたカレンダーの日付が、あの日以来途端に遅く感じている。足踏みしているだけでは何も変わらない。そう思っているのに、進むこともまた、難しいのだ。進んだ先に、ハッピーエンドがあるのはドラマだけで、そんな同性の愛が、私の前にころがっていると、そんな風には思えない。
結局、雪花に甘え続けている。雪花の無垢で悪意のないであろう言動に、浅はかな心を満たすのだ。
「進め、恋する乙女、なんてね。思い出したんだ。頑張ってみないと」
足踏みしている思考に区切りをつけて、ずっと未来を見据える。
「ありがとう! なっちゃん」
心のどこかで、幼い雪花がそう言った気がした。まだだよ。まだ、決めただけなんだから。
「せっちゃん、今行くよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます