第9話「もう、抑えられない」

 花瓶のホトトギスが萎れてきた。花言葉には月美の愛を感じたが、こう萎れてしまうとその想いが散っていくように感じてどこか心細い。

「萎れてきたね。そろそろ別の花があったりする?」

 花を見ながら頬杖をつく私の手を、月美は半ば強引に掴む。強く掴むものだから、少しだけ手首が痛む。

「ちょっと、月美っ……」

 次の瞬間、私の唇は、月美に強引に奪われてしまった。唇を付き合わせるだけの優しいキスだったが、そのまま時間だけが過ぎていく。長く、長く、唇がひたすら触れ合っている。

「姉さん、私、もう抑えられない。姉さんが好き。姉さんをどうしたら落とせるかなんて分からない。ごめん、強引に奪っちゃって」

 触れ合わせた後、そのままの距離でじっと目を合わせ、月美は悶々とした表情で私へと迫る。本当に、もう抑えられないんだなと、その様子で納得する。それだけ、私が好きなんだ。

「姉さん、姉さんの答えを教えて。私のキス、やめなかったよね。逃げなかったのは、なんで? 教えて欲しいよ、姉さん」

 切なそうに、愛おしそうに、それこそ愛するものを守るように、そっと、そっと問いかける。私は、どうして逃げなかったのだろうか。なんて、今から長考するまでもない。今ハッキリした。私の答えを出そう。

「月美、私は――」

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