第8話「小さく、想いを咲かす花」
「姉さんは、花好きだっけ」
突然の質問に、私は洗い物をする手を止める。最近は月美のフラワーショップの仕事が手に堪えるようなので、代わりに私がすることにしているが、私はこれだけで充分手に堪えている。
「月美程じゃないけど、まあ、好きだね」
好みや性格が違う、というのは職業にも当然現れていて。私はデスクワーク、月美はフラワーショップの店員だった。
「この花、好き?」
そう言って月美が見せてきたのは、小さな紫の花だった。そしてその花に私はハッとする。
「ホトトギス。小さい頃に二人で見た花だ」
小さい林の中を、二人で駆ける。そこで見つけた小さなその花を、私はいたく気に入ってた。今でも、その事を思い出して、嬉しくなるくらいには、好きな花だ。
「野の花だから、探すのに苦労したよ。でも、何とか見つけた」
あげるよ。部屋とか、どこかに飾って。そう言って、数本の束を差し出される。食器を洗い終えると私は、その花を受け取って、花瓶代わりのグラスに生ける。うん、やはり綺麗だ。
「その子の花言葉、知ってる?」
うっとりと見ていると、月美は微笑む。
「知らないけど、何?」
気になったので、すぐに答えを聞くが、月美はくすくすと勿体ぶって答えない。
「教えない。でも、私もその子、好きだよ。姉さんに絶対送りたいって、ふと思った」
私は首を傾げながら、自分で調べてみるか、なんて思った。
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