第7話「姉妹という関係」

 月美との行き当たりばったりの散歩は、今までの外出の何よりも歩いたと自信を持って言える。何故なら、次の日の筋肉痛が酷すぎたからだ。

「デスクワークって、筋肉衰えるんだね」

 対して月美は私と違い、フラワーショップで立ち仕事をしている為か、全く筋肉痛の面影もない。そういえば、出勤も徒歩だったか。双子の肉体も、実は大きく違うのだと実感する。

「日和姉ちゃんはもう歳だわ。月美、養っておくれ……」

 月美のマッサージを受けながら、少しふざけて言ってみる。今なら本当に養って欲しいくらいだ。それくらい動きたくない。散歩が土曜日で本当に良かった。

「それって、私と付き合ってくれるって事?」

 マッサージをする手を止め、すぐに月美は聞き返す。ああ、そうだった。月美は私とそういう関係になりたいんだった。いやまあ、嫌とは思ってないが、やっぱり姉妹という壁が、私の思考をさえぎってしまう。

「それが許される世の中なら、とは思うけど」

 思うけど、私はその壁を越えようとすら、思っていない。壁があるなら、寄りかかって楽をしたっていいじゃないか。私は、姉妹の壁に寄りかかって、月美の想いから逃げている。前から、今まで、多分これからも。

「そっか。じゃあもっと頑張って日和姉さんをおとす。その時は、素直になってね」

 月美は壁を越えようとしている。越えて、私を引っ張って行こうとしている。その頑張りが、見ていて心地よい。

「じゃあ、私はその時を待ってるよ。月美」

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