第8話「片想い・繋がらない……ハル×愛優」

『私は、悪い事をしました。ケンカの引っ込みがつかずに、離れ離れになってしまった』

 夜寝る前、その書き込みを見て、どういう訳か私は咄嗟に返信をする。

『その人と、仲直りしたいですか? 私も似たようなことがあって、仲直りしたいんですけど、難しいですよね』

 ネット上で自分の事を話し始めるなんて、トラブルの元なのに。急に襲った衝動は、私を混乱させる。

『したいんですけど、ずっと拒絶してしまって、今更どうにも出来なくて』

 この人は、きっと愛されて、愛してて、ただ今だけ辛いだけなんだ。私は、きっと偽物の愛で、明季さんを操ってるだけだ。この人が、羨ましい。

『だったら、大丈夫だと思います。きっと、お互いに仲直りしたいなら、できますよ。私は応援してます』

 私が出来ない事を出来る。だったら、やって欲しいと思うのは、当然ではないだろうか。

 でも、出来れば、私も……

『ありがとうございます。私の話に付き合ってくれてありがとうございます。貴方も、どうか仲直りできると良いですね。応援してます』

 見知らぬ人に、応援される。それがどれほど嬉しいだろう。私も、いつか変われたら、そう思い、スマホを置く。ありがとう、「鮎じゃないよ」さん。

「変えてくださいよ。明季さん」

 それでも願ってしまう自分に呆れながら、そっと目を閉じる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る