第6話「人肌の暖かさ」

 今日済ますことを全て終え、そろそろ寝ようかと暁美に声をかける。テーブルに顎を乗せ、ウトウトと今にも寝そうだ。

「布団で寝ないと風邪引くよ」

 体を揺すってやりながら催促するが、暁美はいやいやと首を振る。

「布団だって入ると冷たいじゃん」

 確かに最近は急に冷え始め、布団に入ると冷たさを感じる頃合だ。温まるまではむしろ布団の入ってる方が寒いとさえ思う。

 して、どうしたら暁美は入ってくれるだろうか。湯たんぽを使っても、時間がかかるし。

「そうだ、抱き合って寝よう。ぎゅっと、くっついてさ。きっと暖かいよ」

 お互いを抱き枕のように抱きしめて寝れば、お互いの体温で暖かいだろう。それに、愛し合っていることを実感出来そうなのもある。

「それなら、いいかも」

 私の提案に乗ったらしく、のそりと暁美は体を起こしてベッドに向かう。ウトウトとおぼつかない足取りが心配になってしまう。その姿を後ろから見ていると、寝室前のドアに一度ぶつかってしまう。私はそれを見て心配と面白さの狭間で震えてしまう。

「じゃあ、おやすみ」

 ようやくベッドにつくと、2人でぎゅうっと抱き締め合う。体温が、鼓動が、吐息が、いつも以上に身近に感じる。その安心感に包まれながら、2人揃ってその日は快眠だった。

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