第5話「好きになるということ」

 私は、暁美と付き合っている。その事を心から応援してくれる人は、そうそう居ない。そのくせ批判ばかりはねずみ算のごとく増えていく。生産性がない、精神異常者、異端。そんな言葉など、とうに聞き飽きている。

「暁美、ごめんね。私に付き合わせちゃって」

 私は過去に一度、暁美に謝ったことがある。私達の関係の全ては私が彼女を同居に誘ったことが始まりで、告白だって私がした。だから、彼女に心からの好意があったのか、分からなかった。

「夜宵、私辛いなんて言ってない。嫌だなんて、言ってないよ」

 私は最初、暁美が何を言っているのか分からなかった。脈絡もなく何を話し出すのかと思った。でも、暁美はちゃんと私に答えていた。

「同性を好きになるって、そういうものでしょ。だから私は戦うよ。何を言われても負けない」

 私は、暁美の口からその言葉を聞いてどれほど嬉しかったか。私の押し付けでないと分かったことが、どれほど嬉しかったか。その時だったと思う。私達は真に愛し合っているのだと、自信を持って言えるようになったのは。


「これ、本当に投稿していい?」

 ある程度の文章をパソコンに打ちこんで暁美に問う。私達のターニングポイントを教えて欲しいというブログでのコメントに応えようと書き始めた文章だが、なにぶん気恥しさがあるものだから、どうしたものか。

「良いよ。恥ずかしいけど、私は言いたいから。私は何があっても夜宵が好きだって」

 暁美の言葉に、私もうんと頷いて、投稿する。少しでも多くの人に響いてくれたらと、切に願って。

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