第6話「新しい気持ちで」

 私は雪花が好きだ。今までもそれは変わらない。でも、私の思う好きは、友情と言うか、親しみを込めたもののつもりだった。隣にいると心地が良くて、当たり前のような暖かさだと思っていた。

「そんなの聞いてないよ」

 泊まりから帰った我が家、自室の天井を見上げてボソリと呟く。自覚と共に湧き上がった想いは、昔から変わっていない。強く、雪花を想っている。こんなに、恋は自らの心が脈打つものなのかと驚かされる。

 雪花は、覚えているのだろうか。私が言ったということを。覚えていたとして、その感情をどれほどのものと思っているのだろう。例えば昨夜のあのキスは、どのような感情がこもっていたのだろう。

 あれから色々なことが想起されては私を不安にさせる。私にするようなスキンシップを、他の人にしているのかとか、それこそどんな思いでしているのか、とか。ずっと同じ思考がループしている。

「ダメだな、私」

 自覚する、という事はそれだけ大きなものなのかと、再三驚かされる。確かに自覚する前からその気持ちはあったというのに、気付く前と後では大きく異なってしまうのだ。私は、どうすればいいのだろう。

 とりあえず、明日からの学校を、私は自然に乗り越えなくてはならない。頑張らなきゃなと、気持ちを切り替える。

 昔ながらの想いでも、新しい気持ちで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る