第5話「お泊まりです②」

「ごちそうさまでした」

 夕飯を食べ終え、雪花と声を合わせて言うと、一緒に食卓を囲んだ雪花の母は、クスリと笑みを零す。父はいつも仕事が遅いようで、今日の食卓にも姿を現さなかった。私にとってのレアキャラみたいな感覚だ。

「本当に仲がいいね。二人で一人って感じがする」

 雪花の母の言葉に少し考えを巡らす。二人で一人。そんなにも私と雪花は似ているだろうか。いや、そういうことを言っている訳では無いのだろう。信頼しあって、自然と足並みが揃う。そういう所が、二人で一人なのかもしれない。

「そうだよ。だって、ずっと一緒に居るって、幼稚園の頃からの約束だからね」

 雪花ははにかんで言う。ずっと一緒、いつまで続くのだろう。私達の関係が、いつまで保証されるのだろうか。ふと考え出すと、負の思考が止まらなくなる。いつか別れる、他人になってしまう。そんな日が来る気がして、少し嫌な気分になった。

「夏海、大丈夫?」

 背もたれに身を預け、そんな思考に溺れていると、雪花の声が私を掬い上げる。今は一緒に居られる。そんな安堵が私を優しく包んでくれる。

「大丈夫、お腹いっぱいでちょっとぼんやりしてただけだからさ」

 スッキリした頭で応じ、席を立つ。少し雪花の部屋でゆっくりしてから、お風呂に入って寝よう。それだけの単純なお泊まりでも、雪花となら楽しめる。その事に嬉しいような気持ちを覚えた。

「ずっと、一緒に居られるといいね」

 照れくさく笑いながら、私は雪花のさっきの言葉、幼き日の言葉に返す。


 いや、違う。思い出した。

 幼稚園の日々、「ずっと一緒に居る」と言い出したのは――私じゃないか。

 自分の幼き日に、不意に驚かされる。まさか私の方がそんな約束をしたなんて、今の今まで忘れていた。私が雪花を好きだったんだと急に思い知らされてしまい、困惑してしまう。私は、これからどうやって雪花と接すればいい?

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