第5話「年下の先輩……愛優×夏海」

「そういえば、愛優さんはバイト代ってどう使うんですか」

 ある日のバイトの休憩時間、私のバイトの先輩、といっても歳は私よりも二つ下の夏海が問いかける。

「あんまり考えてないな、暇つぶしできてお金も貰える、って感じでやってるだけで」

 貯まったからと言って用途は特に無いし、必要なものがある訳でもない。まあ、いざと言う時に、といえばいいのだろうか。

「愛優さん、しっかりしてるって言うか、ちゃっかりしてますね」

 ちゃっかり、と、褒めているのか貶しているのか分かりにくい言葉に首を傾げる。褒めていればいいのだが、ううむ。

「だったら、いっそ人になにかあげるのも良いんじゃないですか。誕生日とか」

 私からの提案です。と、夏海は明るく話す。きっと心当たりの友人でも居るのだろう。そういう人が、私に居るのだろうか。

『ありがとう、弁当、美味しいよ』

 頭をよぎる影に、ため息がこぼれる。一番に浮かぶのが彼女なのだから、自分が自覚している以上に芽衣を好きなのだろう。

「仲直りにも、プレゼントって使えるの?」

 思い切って、歳下にでもすがって聞いてみる。もし、私の努力が実るなら。癪だがそんな気持ちは否定しようがなかった。

「使えますよ。思いが伝わるものを、選んだら、ちゃんと伝わると思います」

 なら、頑張ってみよう。まだ、あの寮には戻ろうに戻れないけど。

 いつか、プレゼントを片手に、またあそこに帰ろう。そう決意し、私は休憩室を出る。

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