第5話「たまには私から」

「月美、明日、一緒に出かけよっか」

 週末の食後、私は月美に提案してみる。してみて思い出したのは、私が月美に出かけるのを最後に提案したのがいつだったか忘れる程度には私からのアプローチが少ないということだった。いつも受け身で、ただいなすだけ。それはさぞ寂しかっただろう。

「え、本当に一緒に出かけられるの?」

 驚きのあまり確認までし始めるのだから、確かに私は人を誘うという行為が苦手なんだろうなと、納得する。

 以前お願いを聞くと言ってくれてから日課になっている月美の皿洗いをダイニングから眺め、話を続ける。

「うん、たまには私が誘ってもいいでしょ」

 明日の事なのに私は何処に行くかさえまだ決めていないが、最悪ノープランでも月美は喜んでくれるだろう。そんな不思議な確信がある。双子だからだろうか。

「全然良いよ。凄い嬉しい。日和姉さんとならどこにだって行ける!」

 勢いで皿を割りそうなくらいの興奮で、私の話に食いつく。どこにだって、か。私の確信は案外外れてはいなかったようだ。

「何処にでもとは言うけど、月美はどこに行きたい? 何も無いと、本当にどこにでも行っちゃうよ」

 そう聞きながら、それもいいなと思う。2人とも知らない場所を、探り探りで歩いていく。なかなかいいじゃないかと思う。

「たまには、行き当たりばったりでも良いよね。姉さんと一緒なら、私は平気だよ」

 嬉しいことを言ってくれるじゃないか。なんて、照れながら月美に笑みをなげかける。

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