第4話「同じ見た目に同じ服」

「ただいま」

 月美の帰宅と共に目を覚ますと、外は既にだいぶ暗くなっていた。せっかくの休みを潰してしまった感が否めないが、まあ、文字通り休んだのでよしとしよう。

「おかえり。何か買ってきた?」

 リビングに顔を出すと、月美は鼻歌を歌いながら陽気に服のタグを外している。同じ服が二着。いたく気に入ったのか。

「ペアルック着てみようと思って買ったんだ」

 嬉しそうに話す姿は見ていて微笑ましいが、それを私に相談しないで買ってしまうのはどうなんだと思う。服のデザインはそれなりに好きだし、悪くは無いのだが。

「あとで着てみよっか」

 体格に大きな違いが無いのは、こういう時に便利だなと、一枚とって試着する。髪は月美が短くしているが、それ以外に目立って違うところがないので、これを着て歩いたら分身しているみたいだ。

「あ、そうそう、夜宵先輩に会ったんだ。日和にもよろしくって」

 夜宵先輩か、私は対してお世話になったり助かったりと言った事が無かったので、月美ほど印象に残っていないが、波長はそれなりに会う人だったと思う。懐かしいと感じる大学時代も、まだ一年と半年程しか経っていないのだから、気が早いなと感じる。

 来年も、再来年も、私はこうして月美と過ごすのだろうか。結婚願望はあるわけでないが、ずっと姉妹二人暮らしというのは、普通なのか。色々思うところがあるが、このペアルックが着られないくらい古くなるまでは、一緒にいるのもいいなと、妹を想う。

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