第3話「食事のお誘い」

「「今日職場で」」

 またある日の食卓、私達は同時に声を上げる。前準備も息を合わせるのも一切していないのに、こうして同じ台詞を同時に発する時には、確かに双子なんだなと実感する。

「あ、姉さん先でいいよ」

 その後にこうして自然と譲ると、今度は私が姉である事を実感するのだ。

「今日職場で、食事に誘われたんだ」

 二人で食事しませんかと、私を誘ったのはたしか後輩の子だったか。私もたいしてベテランではないのだが。それでも相対的に私はベテランという認識だし、歳が近い分話しやすいのもあったのだろう。

「どんな人? 男だったらもっと詳しく」

 そういう月美は、少し慌てているような、急かしているような、そんな雰囲気を醸し出している。男に飢えてるのかと思ったが、すぐに月美が飢えてるのは私かと思い出す。それにしたって、こうして毎日二人の食卓なのだから、焦ることでもないだろうが。

「男だけど、こう、忠犬みたいな後輩」

 私の、というより人の頼み事は何でも聞くし、素直でよく頑張っている。多分あれは忠犬だろうなと、一人納得した。

「私も、姉さんのお願いなら何でも聞くし」

 張り合ってるなぁ、とぼんやり思いながら、私は先に夕食を食べ終え、キッチンに食器を置く。

「じゃあ、私の食器も洗ってちょうだいね」

 何でも聞くなら上手く使おうと、いたずらっぽく笑みを投げかける。

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