第2話「いつから恋し、何故恋したのか」
そもそも月美はなぜ私をそこまで特別視するのだろうか。私たちが生まれて既に二十と三年は経っているわけだが、どこから私をそう想うようになってしまったのか。
「私が姉さんを好きになったタイミング? そうだな、生まれたときから?」
夕飯時にさりげなく聞いてみたが、帰ってきた返答に呆れてしまった。どうしてこうも思考は二人で大きく異なっているのだろう。一卵性双生児で似るのは容姿だけだっただろうか。
「月美、多分だけどそれは刷り込みって言って、私を親か何かと勘違いして大好きになってるだけなんじゃないかな」
突発的に好きだとか言い出したり、あっさり満足したり、多分そこに本当の恋愛のような深い感情はないように思える。刷り込みとは、流石に言い過ぎた感もあるが、それくらいの方がすっぱり納得してくれるだろう。
「いやいやいや、お母さんはお母さんで大好きだよ。大好き。お母さんはお母さん、姉さんは姉さん。私は、姉さんに片想いしてるわけ」
む、刷り込みという言葉選びが悪かったのだろうか。食事をする手を止め、次の言葉選びを始める。そもそも私を好きになるのは無理があるだろう。双子であるのはもちろんだし、前提として血縁関係と同性関係があるわけで、つまり、ありえない恋愛対象なのだ。それでいて、私と月美はそっくりときた。はたして、月美は私の何に惚れたのか。
「何に惚れたのかなんて、姉さんも無粋なことを聞くね」
んん? 何故私はいま月美に呆れられなければいけないんだ? ため息を一つつきながらあのねと説き始める月美に耳を傾ける。
「女子の恋愛感情っていうのはね、理屈で動くものじゃないんだよ。なんとなく、自分の心が好きって思ったときに、好きになるわけ」
いや、その返答はずるいだろう。そう思いながら、私は夕飯を平らげた。
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