一日ひとつの百合物語

an=other

月曜日「双子百合」

第1話「ずっと一緒に生きてきて」

「わたし、日和姉さんが好き」

 私は妹の月美が発した言葉を、理解できなかった。

「私が好きって、ナルシストでも拗らせた?」

 双子の姉を好きになるなんて、そうとしか思えない。実際、私たちは一卵性双生児で、特にそっくりに産まれて、今まで生きてきたのだ。少なくとも私にとって私と月美に対した差異はない。

「別に自分のことを鏡で見ても、何も思わないよ。姉さんが特別好きなの」

 私の手を掴んで熱心に言うものだから、私は気圧されてしまう。これほどの気迫なのだから、たぶんその言葉に嘘はない。だからこそ私は困ってしまう。そんなことを急に言われたって、私は何とも言えないし、月美のことは姉妹としか見れない。

「好きなのはわかったけどさ、つまり月美は何を望むの?」

 私は落ち着くようになだめながら月美に問うてみる。今このタイミングでそのような申告をしなくても、私たちは一緒に暮らしているし、それは今までもこれからも変わるまい。それだけは自信を持って言える。わざわざ想いを伝えなくても、同棲に近い事はできるのに。何が望みなのだろう。

「何って、言われても……何だろう」

 月美の反応に私はつい笑みがこぼれてしまう。大方、テレビか何かに影響されたのだろう。考えなしに動くところは、昔から変わらない。だからとりあえず、今は月美の願いに従ってみるとしよう。そう思い、頬に口づけをした。

「これで、満足?」

 そう、いたずらっぽく言ってみると、すぐに月美の頬は赤く染まった。

「ま、満足! えへ、えへへ」

 まあ、喜んでいるようなので、良しとしよう。

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