第3話「AIとよりも難しい恋③」

「先輩、なんで、私の事を知ってるんですか」

 昼休み、私はかの先輩と昼食をとっている。というより、問い詰めている。

「いや、だって直接の部下だし」

 しかし先輩はこのように全く相手にしようとしない。適当にあしらって私をからかうのだ。ああ言われてしまった以上、隠しきれるはずもなく私の恋心は知っているはずで、本当にただ私をからかっているだけで、だから私はもどかしい。

「なんで、私が彼女に恋している事を、知っているんですか」

 自分で言うのも癪だが、こうはっきり言わないとこの先輩は相手にしてくれない。渋々切り出すと、よろしいと先輩は小さく笑む。

「よく認めた。無自覚ならわざわざ言うのもなと思って、しらばっくれてみたけど、うん、いいじゃん、恋する乙女」

 何やら話す気になったと思えば、まだくどくどと何かを解くつもりなのだろうか。私はただ、知りたいことが一つ、それだけなのに。

「そうだね、なんで知ってるのか、だっけ。そりゃあ、分かるよ」

 先輩は自信満々にそう言って、少し含んで神妙に言い放つ。

「だって、私も同性が好きだからね」

 私は、何も言えなかった。まさか、こんなにも近くに同じ仲間が居るなんて、思ってもなかった。先輩は、更に続ける。

「仲間の事は、よく分かるつもりだよ。仕事仲間としても、また同じ性的指向を持つ仲間としても」

 だから、私の事を、私の恋心を、あっさりと看破したのか。その上で、私を励ましたのか。

「あの、私は、どうすればいいんですか」

 先輩を、すぐに頼ろうとシフトする思考に、なるほど必死だなと自分の感情の深さを認識する。それだけ、好きなのだと、理解して頬が赤くなる。

「大丈夫、結ばれるかは保証できないけど、色々教えてあげるから」

 だから、最後はあなたが頑張るの。そう、先輩は優しく、暖かい眼差しで私を諭す。

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