第3話「10年以上の差」
「明季さんの聴く曲って、結構昔のですよね」
私が音楽を聞いていると、ハルはプレーヤーを指さしてそんなことを聞く。昔、まあ、結構昔だ。昭和の曲ばかり聞くし、お陰で私はCDよりカセットテープの方が多く持っている。
「結構気に入ってるんだけど、もしかして古臭いからモテないの?」
私は少しだけ不安になってしまう。そういえば同僚もカセットテープと言って通じた人の方が少なかった。まさか、そんな理由で私は敬遠されていたのだろうか。
「どうでしょうね、でも、私は嫌いじゃないですよ。結構聞いていればいい曲に感じますし」
ハルは軽く笑みを浮かべながら、私の流す曲を聴く。それなら、良かったのだが。今の人はどんな曲を聴くのだろうか。今のアイドルの名前も浮かばないし、確かに古臭いなと、年齢以上の老いを感じてしまう。
「ハルは、どんな曲が好きなの」
今度、CDでも買い与えようかと思って聞くが、すぐにハッとする。そういえば、今はスマホで音楽を聴くからCDすら必要ないのだったか。それは、まあ仕方ない。その時はまた別の何かでも送ってみるか。
「私は、明季の声が好きだよ。感情豊かで、聞いていて飽きないし」
そう、不敵に返され、今日もまた何も言い返せずに頬を染めてしまう。
「だから、いっぱい声を聞かせてね」
耳元まで迫られ、そう囁かれたのが決め手となり、私はノックアウト、その場で倒れこんでしまった。今どきの女子高生は、なかなか難しい。
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