第2話「出遅れているわけじゃない」
ファーストキスの味なんて、全く考えられなかった。強いていえば、いや、強いて言う言葉も見つからない。
それ程までに急に、私の頭は真っ白に掻き乱されたのだ。およそ10歳は離れているであろう姪の少女、ハルに。
「明季さんは、ずっと独り身だったんですよね。私のお母さんに、呆れられるくらいには」
なんと馴れ馴れしい。とはいえ、その言葉に嘘や間違いは一つもない。私はずっと独り身だし、それでハルの母親、私の姉に呆れられていることもまた、事実だった。
「とはいえ、出遅れてるわけじゃないわよ。私まだ26だから! まだ手遅れじゃないから!」
あまり強く言うと、余計に焦っている感が伝わってしまっただろうか。ハルは俯いて表情を見せず、クスクスと笑みだけをこぼす。
何が、何がそんなに面白いのだろう。私だって、好きで一人でいる訳では無いし、ハルだって学校が近いってだけで押し付けられたのだ。私の何がそんなに面白いのか。
「ううん、手遅れじゃないよ、明季。私が明季を貰ってあげるから」
そう言って、ふと上げた顔から覗かせる瞳は、私の心を乱暴に掴んで、釘付けにする。何故だろう。何故私は、10も歳下の少女に、こうも上手く扱われてしまうのか。そう思いながらも、私はその瞳に縛られることしか、出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます