第2話「よく見てる」

 愛優は料理が上手い。前に弁当を押し付けられた時に分かったのだが、本当に上手だった。いつも同室でありながら全く互いを知らず、料理も各自だったので、意外だった。

 しかし、洗濯はてんでダメな様で、いつもコインランドリーを利用していた。と、ここまでで思う。いつから私はストーカーじみた行為をするようになったのか。相手は、あの気に入らない態度の愛優なのに。

「芽衣、最近私のこと見すぎなんだけど。私なんかした?」

 私が自分の行いに気づく頃には、当然愛優も気付いており、怪訝な顔をされてしまった。いや、確かに見すぎていたとは私も思うが、そんな言い方をされてしまうと、いつものように喧嘩スイッチのような何かが刺激されてしまう。

「別に、弁当が美味しかったからどうしてるのか見たかっただけだよ。悪かったね」

 あ、と気づいた時には遅かった。うっかり何も考えずに喧嘩腰で物を話せば、つい本音がボロボロと出てきてしまった。そんな、私が少なからず好意的に思っているようなイメージがついてしまう。

「そ、そう。だったらこれからは私が料理してあげてもいいけど」

 少し口角を上げながら上から目線で話す愛優に、どこか敗北感を覚えてしまう。まさか、後輩相手にこんな事になるとは。頭を抱えながらやれやれと自分の行いを顧みる。

「その代わり、洗濯は芽衣がやってね」

 上から目線とは一転、最後にそう言った彼女の顔は、あさっての方向を向いていた。なんだ、愛優も私の事を見ているじゃないか。そう思い、お互いに意地の張り合いだなと、苦笑してしまう。

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