土曜日「フリーコーナー」
第1話「AIとよりも難しい恋①」
『アイは、僕の最高のパートナーです』
テレビをつけると、一人の男性が祝福を受けていた。内容は、人工知能の進化と、機械恋愛。要はテレビに映る男性は、AIと恋に落ち、結ばれたのだという。素晴らしい話だ。人は無機物有機物の壁を越え、作られた心と結ばれるようになった。
全く、羨ましい。
今現在人類の、もとい日本人の恋愛観は歪んで進んでしまっている。機械に恋することは祝福されても、今の今まで、未だに同性との恋愛は異物と見られている。男女の恋愛こそが至上であり、異性恋愛に見えるなら機械とだって恋ができるが、例え人間同士であれ、同性間での恋愛はありえないものなのだ。
私には好きな人がいる。私とその人は、人工知能の研究を行う会社の同期で、なんとも悲しいことに、同性である。社内恋愛は咎められない会社で、社内に多くのカップルがいるが、会社の性質上AIと恋に落ちるものこそ居れど、当然のごとく同性カップルなんてものは一組も居ない。多分私が想いを寄せる彼女も、異性愛正常論を信じて疑わないのだろう。
見ていてうんざりしてしまい、結局何分と見ることもなく、テレビを消した。
「昨日テレビでやってたの、ウチの開発した子だよね!」
翌日、出社すると真っ先に、彼女は私にその話を振ってきた。
「ああ、そういえば、そうだったかな」
彼女の話題が耳に痛い。そもそも数分と見ていないし、その時の男が結ばれたAIなど、顔も覚えていない。この話を、私は続けなくてはならないのだろうか。
「いいなあ、私も機械でも人でもいいから恋人がほしいな」
彼女の言葉に、私はより鬱蒼としてしまう。なりふり構っていないようにみえて、それでも私は受け入れてくれないのだろう。遠い。本当に遠い。
「私が男だったら、あんたのことを貰ってやったんだけどね」
その言葉に、嘘はなかった。本当に、私が男だったらと何度思っただろうか。あるいは、女性同士でも恋して結ばれて、祝福されて、そういう世の中だったら、どれほどよかっただろうか。私は、いつだってそう思っている。
「あはは、イケメンな彼氏が出来ちゃうな〜」
彼女は、きっと私の想いに気づいてはいない。適当に流して、明日にはこのことも忘れるのだろう。そうして、私も彼女も世界も、変わることはなく、今日も平然といつも通りに動く。それが、ほんの少し憂鬱で、ほんの少し、辛かった。
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