託宣③

ついに【託宣】がはじまった!




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「アーリア村のみなさん、これより聖神カルディアからの【託宣】を、みなさまにお伝えします」

やぐらの上で司祭が告げる。

村人たちは列をなして、やぐらの前に並びはじめた。


列の先頭に並んだ女性が、司祭の下に立つ。

「さあ【本】を」

司祭が告げ、女性は【バインダー】を開く。

水のような透明な液体を取り出し、司祭が宙にまいた。


きらきらと陽の光によって輝いた液体はそのまま光になり、女性が開いている【バインダー】に吸い込まれた。

女性は村人たちの列に向き直り、【バインダー】を掲げる。

「アーリア村は、ここに聖神カルディアからの【託宣】を受けました。また次の【託宣】まで、神のご加護があることでしょう」

彼女が開いている【バインダー】のページには、先ほどまで存在していなかったカードが収められていた。


「今年は、マリーがやっていたかもしれないんだけどね」

マリーのお父さんケビンさん

「あれがアーリアの巫女ですよ。村の代表として、最初の【託宣】を受けるんです」

やぐらに目を向けると、並んでいた村人は次々に司祭の放つ光を浴び、【託宣】を受けている。

そして新しく【バインダー】に収められたカードを見ては、一喜一憂していた。

「【託宣】で貴重なカードを手に入れれば、それに見合うように自分の地位も上がります。

 みな、年に1度のこの機会を楽しみにしているんですよ」


話をしていると、突然やぐらの前で歓声があがった。青年がガッツポーズでカードを掲げている。

「おお、あれは【神殿衛士】のカード。彼は皇都で聖教会の衛士を努めることになるでしょうね。

 前節、剣術大会で優勝したのを、神も見てくださったのでしょう」

なるほど。現実世界で例えれば、要はカードパックの配布か。実績が考慮されるようだけど…面白い。

「じゃあ、僕も並んできます」

「ええ、幸運を」


【託宣】はさらに進み、並んでいた僕の番となる。

司祭が液体をまくと、【バインダー】へ光が降り注ぎ、カードになった。

絵柄とテキストが徐々に見えてくる。

(村人、村人、収穫祭、村人…)

どう見てもレアには見えないカードばかりが浮かび上がっていく。

ハズレパックかとげんなりしたが、最後の1つがなかなかカードにならない。

それどころか、青白い光は赤色に変わり、輝きは強くなっていった。

「こ、これは―――!」

司祭が衛士に指示を出す。

赤色の光は徐々におさまり、ようやくカードになった。

「《聖教会への叛逆》…?」

僕は思わず、カードになったテキストを読み上げる。

「動くな!叛逆者!」

気が付くと、僕は教会の衛士に囲まれていた。みな、僕に対し敵意をむき出しにしている。

まさか、《聖教会への叛逆このカード》をひいたせいか?

冗談はよしてくれ、叛逆するそんなつもりはない。そう弁明しようとしたとき―――


「面白い。やはり、余が赴いたのは、無駄ではなかった―――」

衛士の囲いの一部が、道を空けるように下がる。

そこから姿を現したのは、刀のように鋭い野望を瞳にたたえた大男だった。

「領主様!」

領主と呼ばれたその大男は、自身に満ちた声で、高らかに宣言する。

アーリアこの村を、叛逆の意思ありと見なす!

 余の【刀】で宣言する。征伐だ―――鏖にせよ!」

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