託宣②

マリーは旅に出た。

【託宣】を一目見るため、波瀾万丈はアーリアの村に滞在する。

そして、そのアーリアの村に向かう司祭と【刀の領主】とは、いったい何者なのか?




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




朝。アーリアの村の広場に、小さなやぐらが用意された。

収穫された穀物や果物がそこに運ばれてゆく。


「どういった意味の祭なんですか?」

騒がしさにひかれた僕は広場を訪れ、指揮をとっている村長に尋ねた。

「よくある祭ですよ。収穫をよろこび、神に感謝し奉納して、来年の豊作を祝う―――」

「神…」

ここ【神教国カルディア】は宗教国家だ。

唯一神として聖神カルディアを崇め、その祭事を取り仕切る【カルディア聖教会】が、この国を統治している。


「司祭さまが到着されました!」

アーリアの村がいっそう騒がしくなる。

「さて、お迎えに上がりますか。ハランさんもご一緒にいかがですか?」

「いえ、僕はここで祭を見学させてもらいますよ」

「そうですか、では」

村長は教会からの使者を迎えに、門へ向かった。


「神、ね…」

僕がこの世界で目を覚ましたとき、【本】から響いた声。

(助け、貴方、喚んだ、世界、カード…)

セオリーからすれば、あれが僕をこの世界に喚んだ【神】からのメッセージと思う。

しかし、あれからは一向にこの【本】から声が聞こえるようなことはなかった。

誰が、何のために僕を喚んだのか…

この【託宣】でなにか分かるだろうか。


やぐらに質のいい服を着た男性があがり、周囲を見渡す。

確か、司祭と言っていたか。

司祭といえば、一般的な教会の階位を考えても、そこまで位の高い方ではないはずだ。

しかし、離れた場所から見ても、司祭の服や装飾は、村人との身分の違いをはっきりと感じさせる。

「神、ねえ…」

僕の【カルディア聖教会】への第一印象は、あまりいいものではなかった。


「アーリア村のみなさん、これより聖神カルディアからの【託宣】を、みなさまにお伝えします」

やぐらの上で司祭が告げる。

年に一度といわれるアーリア村の【託宣】がはじまろうとしていた―――

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