えぴそーど、じゅう。ひつぎをつくるようじょ。

 二か月ぶりにエピソードを更新します。皆様いかがお過ごしですか?


 本来であれば東京五輪の開会式が行われるはずの四連休も、今日で四日目となりましたね。GOTOキャンペーンも開始しましたが、我が家は一応東京の片隅に暮らしているので、相変わらずステイホームな日々です。


 梅雨の晴れ間に近くの公園に行く以外は基本家にこもっています。スーパーはネットスーパーの置き配を利用。インターホンを押して「そこに置いておいていただけますか?」と伝えて商品を玄関先に置いてもらい、配達員さんが去った後に回収します。数か月前までは予想だにしなかった生活様式の変化に、時たま悲しくなりますね。


 娘はそんなヒキコモリ生活の中でも、日々成長し、進化した姿を見せてくれます。

 それで今日、娘はひつぎを作りました。


 このヒキコモリ生活が始まってから、私の実母とよくLINEのビデオ通話をするようになりました。なかなか実家に帰れない上、外出も控えているので、私は夫と娘とスマホ画面の中の実母以外とは最近喋っていません。

 

 それで今日も実母……娘からすれば、バーバ……から「パナ子ちゃん元気かな?ニコニコマーク」というLINEが来たので、ビデオ通話を開始しました。


 娘はバーバと通話する時は、普段より張り切ります。図鑑を持ってきて写真を指さしながら「らいおん、ちきね(きつね)、おば(ろば)」等、動物の名前を言っていき、バーバーに「あら~パナ子ちゃんよく言えまちたねーてんしゃいでちゅねえええ」と言われてニヤついたりします。


 そして今日はブロッコリーをすると言い出し(ブロックの事)私はバーバが娘に買ってくれたブロックを床に広げました。


 それからしばらくは娘と一緒にブロック遊びをしていましたが、段々バーバとの会話が盛り上がってきました。バッタの大群が移動してきているらしいし、中国のダムは決壊しそうだし、異常気象は続くし、もうこの世の終わりじぇねえかひえぇぇぇと言った内容の会話でした。

 その間、娘はブロックを上へ上へと積み重ね続けていました。

 そして自分の身長ほどもあるブロックのタワーのようなものを創り出しました。

 そのタワーの真ん中より少し上のあたりが横に長く伸びていて、まるで十字架のような形のタワー。その十字がクロスするあたりに、窓のパーツが取り付けられていて開け閉めが可能になっています。


 正直、娘がこんな大作を作ったのは初めてのことだったので、私はびっくりしました。バーバも孫の偉業達成に大喜び。


「パナ子ちゃん、これなあに?」

 バーバが娘にたずねます。

「ひつぎぃ」

 娘が答えました。

 ――ひつぎぃ? お城でもタワーでもロケットでもない発音の言葉。

「え? 今なんて言った?」

 思わず聞き返すと、娘はまた答えました。

「ひつぎぃ」

 頭にハテナマークが浮かぶ私とバーバ。

「あ、スカイツリーじゃない? パナ子ちゃんスカイツリーでしょう?」

 バーバがそう言うと娘は言いました。

「ひつぎ、ひつぎぃ……」

 私には……その言葉はどうしても。


 ――棺(ひつぎ)にしか思えなかったのです。


 ひええええええええええええええええええええええええええええええええこえええええええええええええええええええええええええええ。


 若干鳥肌をたてながら、私は言いました。

「棺じゃない……かな」

「もうやめてこわいこと言わないでよおおお」

 スマホ画面の中のバーバが悲壮な表情になりました。

「幼児だから……第六感でわかるんじゃない……これから世界は……」

「やめてえええええええ」

「ひつぎぃ、ひつぎぃ……」


 結局娘が本当は何と言ったのかわからないまま、通話を終えました。

 

 それから、その話を聞いた夫がもう一度娘にききましたが、やはり娘は「ひつぎぃ」としか、答えませんでした。


 一体なんだったんでしょうね……。

 落ちはありません……。


 以上、ようじょのちょっと怖い話でした。

 

 それでは次のエピソードまで、どうか世界が平和で何事もなく皆さんも私たち家族もバーバも健康でありますようにどうかどうか神様おねがい!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る