えぴそーど、ろく。ようじょのにゅういん。

 新年あけましておめでとうございます。

 今年もよろしくお願いします。


 皆様、年末年始はいかがお過ごしですか?

 きっと楽しい休暇を過ごされている事と存じます。


 私も、ほんの十日ばかり前までは、楽しい休暇を過ごすつもりでいました。まあ楽しい休暇と言っても実家へ孫を見せに帰ったり、あとは初詣や初売りに出かけたり時間を気にせず家でダラダラしたり、そんなお気楽な休暇を過ごすつもりでいたのです。


 しかし仕事納めも迫った十二月末、事件は起きてしまいました。

 私の溺愛するペロペロ幼女が、入院することになってしまったのです。



 初めは、まーたいつも通り、保育園で風邪をもらってきやがったな~。としか思いませんでした。決算もあるのに年末に娘の風邪でお休みを貰うのが申し訳ないなあと思いながら、お休みをもらい、娘と家でゆっくり過ごしていました。


 しかし普段なら、高熱のピークは二日程で、発熱している時も普段通りに元気に遊んでいる娘なのですが、今回の風邪は様子が違いました。四日経っても39度の熱が下がらず、三日目あたりから食欲もみるみる減っていき、最終的に夕ご飯にたまごボーロを数粒しか食べず、水分も最低限しか飲まないようになってしまいました。

 

 大好きなおもちゃでも遊ばず、ソファーに横になりどこか遠い目をする娘。

 ……これはおかしい。


 ということで、四日目の夜に大きめの総合病院へ娘を連れて行くことにしたのです。


 しかし小心者の私はなかなか、大きめの総合病院の夜間窓口へ娘を連れて行くことの判断に迷ってしまっていました。一体どれくらいの体調の悪さなら緊急の状態と言えるのか自信が無かったのです。

 でも会社の先輩ママに相談したら「私なら迷わず連れて行く」と言われ、ツイッターでも勇気を貰い、夫に車を出してもらって総合病院へと向かいました。


 家を出る時は焦って持ち物確認したり、緊迫した雰囲気だった我が家一行だったのですが、車に乗るとお出かけ好きの娘は少しだけ嬉し気な顔になりました。そして夫は私に「どのお茶がいい?」とペットボトルのお茶を差し出し「車の中のお菓子好きに食べていいからね」と言ってきました。

 夫は映像関係の仕事をしており、私はわりと良くこの“撮影場所へ移動中のタレントのようなもてなし”を受けるのです。そうすると私も嬉しくなってしまい、「うわー至れり尽くせりですねー」なんて言いながらミニ歌舞伎揚げの袋を開けたりなんかしていました。

 すると、二日程最小限の飲食しかせずぐったりしていたはずの娘が、歌舞伎揚げをよこせ、とばかりに手を伸ばし「ハイ」と言ってきたのです。

「え、これ食べる……の?」

「ハイ!ドージョ!」

 こんな……油っぽいし固いけど……? と思いつつ与えると、娘はコリコリ食べ、また「ハイ」と手を差し伸べてきました。

 え……これから夜間緊急窓口に行くのに歌舞伎揚げ食っとるが……。

 戸惑いつつ、ストローマグを差し出すと、娘はイオン系飲料をちゅーちゅーごくごく、マグの半分ほども飲んだのです。

 あれ……水分とれてなかったはずなんですけど……。


 また夜間窓口へ行く自信を失ったような状態で、我が家一行は病院に到着しました。事前に優先度が低い場合は診察までの待ち時間が長くなること等説明を受け、診察前のカウンセリングのような部屋へ通されました。


 ――きっと優先度低くて待ち時間長い系だな。

 と思いつつ、カウンセリングを受けました。細かく話を聞いてくださって、さすが評判の良い病院、と思っていたら……。

「こういう状態ですので、すぐに診察にお通ししますね」


 ――えっ?


 なんと、娘は優先度が高いのですぐに診察に通すと言うのです。

 その先の待合には何組もの家族連れが診察を待っている様子でしたが、それらの皆さんをすっ飛ばし、娘は診察室に通されました。


「ここ見てペコペコしているのわかりますか? 陥没呼吸になっているんですよ」

 看護師さんに説明され見て見ると、娘の胸の肋骨下中央あたりがへこんで呼吸と同時に上下している感じがしました。陥没呼吸という言葉は聞き覚えがあったけれど、まさかそんな悪い状態とは思っておらず、胸のチェックもしていませんでした。


 それからお薬を吸引したり酸素飽和度の数値を見たりしました。娘の酸素飽和度は90を下回ることもあり、良くない状態のようでした。


 お薬吸引の間、ふと診察室のモニターに目をやると、患者の緊急度が表示されていました。何時何分、何歳何か月、低緊急。というような表示が並んでおり、娘は赤字で「緊急」と表示されていました。

 中には「蘇生」という文字もありましたが……赤字の「緊急」は結構悪い方でした。

 もし、家でずっと様子を見ていたら、そのまま夜を過ごしていたら、まさか娘の命は危なかったのか?

 そう思うと、総合病院の夜間窓口へ行く勇気云々で迷っていた自分はバカだったなと思いました。本当はもっと早く来るべきだったんじゃないか。娘は自分の状況を判断して言葉に出せないのだから、自分の小心のせいで娘に何かあったらシャレにならないと痛感しました。


 診断の結果は肺炎で、しばらくは鼻チューブで酸素を取り込む必要があるため、入院になると告げられました。そして今からレントゲンと血液検査をして点滴と鼻チューブをしますと説明され(歯磨きも暴れて嫌がる一歳児にどうやってそれらをやるんだ??)と疑問に思っていると「それではお父さんとお母さんはロビーでお待ちください~」と言われ、娘を残してロビーへ移動。それから待つこと十分程のうちに、それら全て終えて娘は「出来上がって」いました。


 見事に固定された鼻チューブ、グルグル巻きに固められた点滴。


「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアア」


 普段、あまり抱っこをせがんでこないクール系の娘なのですが、この時は人が変わったように両手を上げてブンブン振り回しながら抱っこを要求してきました。


 それから娘が眠りにつくまで二時間程だったか……夫と私で娘を抱っこしたり入院の手続きをして、ようやく夜中に家に帰りました。


 翌日。半日仕事を終えて私が娘の病室に行くと、娘はだらりと力なく、高い柵の中のベッドに横たわっていました。

 最初は眠っていましたがそのうち目を覚まし……。しかし入院の色々で絶望しているのか、目は死んでおり、これって娘? っていうか半分人間じゃないかも……というぐらいに、それはそれは生気のない顔をしていました。


 娘は具合が悪いからなのか精神的に絶望したからなのか、この日はほとんど眠っているか絶望顔で起きているかで一日を過ごしていました。


 翌日。娘は見事な抱っこマンになっていました。抱っこか、降ろすと泣くか。

 泣くというのもただエーンと泣くのではなく、ギャアアアとわめきながら両手をブンブン振ったり、何かに怯えているような様子。

 どうやら娘は、病院で定期的にされる鼻吸いが嫌なようなのです。細いチューブを鼻のかなり奥まで入れて鼻吸いしてもらうのですが、それが恐ろしくて看護師さんやお医者さんが病室に来るだけで鼻吸いかと思い、何も痛くない診察でもギャーーーと叫んで嫌がるようになってしまいました。


 また翌日。この日から食事が再開されましたが、娘はほんの一口しか食べません。表情も初日の絶望顔よりはマシになりましたが、やはり慣れない病院での生活や回診が落ち着かない様子。

 

 結果。娘はあまりにも何も食べず、一応酸素も点滴も必要ない状態となった為、早めに退院となりました。


 帰り道。夫が撮影した娘の写真があります。車のチャイルドシートに乗って、照れ笑いするように舌を出す娘、笑みをかみ殺すようにへの地口にするものの笑みをかみ殺せていない娘、天井を見上げて歌い出す娘、しまいには大口を開けて笑い出す娘……。

 

 娘は保育園でも「芯がある」「がんこ」と言われているのですが、かなりこだわりが強く繊細な性質なのかもしれません。

 そして家族の前でだけ、アホな顔ができるのかもしれません。


 娘が怖い思いをしなくて済むように、健康管理には気をつけないとなと思った年末年始でした。


 退院から三日。現在まだ本調子ではないものの娘は元気さを取り戻しつつあり、先程も私とほっぺにチューをしてから「キャー」と言って照れ合う、という遊びを繰り返したり、キラキラ星の歌を練習したりしてから寝ました。今のところの娘のキラキラ星を、最後に記しておきたいと思います。


 ちーらーちーらーいーかーうー おしょーあーのーおーしーおー

 まーあー(未攻略) てーあー みーんーあーおーみーてーうー

 ちーらーちーらーいーかーうー おしょーあーのーおーしーおー



 それではまた! おやすみなさい~☆


 

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