えぴそーど、さん。まだことばをしらない、ようじょ。

 みなさま、こんばんわ。

 いかがお過ごしですか?

 もしかしたら昼間にこの文章を読んで下さる方もいるかもしれないですね。

 でもこちらは今、夜の十一時三十五分です。

 夕食を軽めに済ませてしまった私は今頃になってお腹が減り、雨の中わざわざ最寄りのコンビニへと出かけ、奮発してTOKYO CRAFTと言う缶ビールと焼き鳥を二本、買って帰ってきました。そして今、その二本の焼き鳥を食べ終えて、残りのTOKYO CRAFTをどう消費したものかと思いながらこの文章を書いています。


 元々私はビールはさほど好きではありません。ビールを飲むと食が進むという方も多いですが、私はビールを飲むとお腹いっぱいになりがちです。それでいて、つまみがなくなった時点でビールは進まなくなる。つまり今、詰んでおります。


 ではなぜビールをわざわざ買うのかといえば、年々、歳と共にビールが好きになってきたからです。なぜ好きになったのか。それは多分、人々にビールが愛されているからだと思うのです。

 つまりミーハーということ? 流されやすいということ?

 いいえ違います。世間の人々に愛されるビールには、自然と思い出が積もってゆくからです。

 今まで務めた職場で行われた飲み会の数々。いつも奢ってくれた、そして退職していったおっちゃんの数々。

 独身女子仲間で飲み屋に集まりくだを巻いたこともあったし、自宅で一人缶ビールを開け泣いたこともあった。

 つまり私は生き過ぎたのです。

 だから色々な思い出が詰まったビールを、ついつい買うようになりました。


 などと今、一行一行書きながらTOKYO CRAFTをぐびぐび飲み進めておりますが、まだ三分の一程も残っています。お腹はタプタプしてきました。


 で何だっけ? と画面をスクロールして、自分で入力した題名を見直してみます。

 そうそう、まだ言葉を知らない幼女の話をしようと思います。


 私の娘はまだ、言葉らしい言葉はあまり話せません。単語でいくつか、ワンワン、ニャーニャー、パンマン、など覚えたものはありますが、自分の意思を伝えるような言葉は話せません。


 今日、娘は体調が悪く、病院へ行きました。酷い下痢とオムツかぶれで、保育園から病院へ行ってほしいと要請があったのです。

 それで病院へ行って、病院というのは娘にとっては地獄ですから、顔を真っ赤にしてギャーと全身全霊で泣き叫んで家に帰ってきました。家に帰ってからは少し落ち着きを取り戻したものの、まだご機嫌は安定しないままでした。

 

 そして午後五時半頃から、娘はワーワー泣き始めました。抱っこしてもアンパンマンを見せても泣いていて、いつもと様子が違う。

 そういう時、私はほとほと困ってしまいます。

 子供のワーワー泣く声は嫌なものです。

 単純に音量としてうるさいだけでなく、聴く人の精神に負のダメージを与え、思考を停止させるのです。


「どうしたの? どこか痛いの? なにかしたいの?」


 とにかく目を見て話せば伝わるかなあ、なんて安直な思いで娘の肩に手を当て、しっかり目を見て訊いてみましたが、娘は「え、なんだコイツ……」という戸惑いの目で私を見るばかりです。


 そうだよなあ、こっちの言葉も全部はわからない上に、向こうからは伝えられないもんなあ。


 それで、YESかNOかで答えられる質問で訊いてみることにしました。

 もうこうなると、知らない言語を使う外国人とのやりとりにも似ています。


「おなかがすいた?」


 娘はワーオーゥとか言いながら興奮気味に泣いています。

 もっと明るく言ったほうがいいのかなあ。

 

「おなかがすいたひとー!」


 すると娘は言いました。


「はーい」


 ……え?

 なんかやけにクリアな声だったなあ。

 ワーオゥーとかヤーノゥーとかではない。

 なんだこの人の返事みたいな発音の声は。

 保育園で習ったのか?


「なにか食べたいひとー!」


「はーい」


 ……もしかしたら娘は「○○なひとー!」と訊かれると「はーい」と自動的に答えるだけなのかもしれない。

 でも、意味を理解して本当に「はーい!」と答えている可能性もある。


 私がバナナクッキーを差し出すと、娘は「はよよこせや」とばかりにクッキーを奪い取り、涙目のまま頬張り「イヒィ」と笑いました。


 ……なにか食べたいひとなんだ!


 それから私は速攻でうどんを作り、娘に食べさせました。

 普段は少しでも熱いと食べない娘が、熱いのを嫌がりもせずにちゅるちゅるうどんを食べていく……。

 それも目を瞑り「う~んぅ」と嬉しそうに唸り声をあげ「チーナァ!(美味しいなあ!)」と味の評価までしてくれました。


 いつもより明らかにおいしそうにうどんを食べている。

 それはお腹が空いていたというのもあるのだろうけれど、娘からしても私と意思の疎通がとれたという感覚があり、それで余計にうどんも美味しく感じているんじゃないか、という気がしました。


  もしも自分が言葉を知らず、周りの人に自分の気持ちを伝えられないとしたら、きっととても不便だし、孤独で不安かもしれない。

  身振り手振りやアイコンタクトで伝わる部分もあるけれど、やっぱり人類にとって言葉って物凄く大事よね。


 と話はうまくまとまりつつありますが、まだTOKYO CRAFTが少し残っています。

 これを飲みきらないと、次のプリンに進めません。仕方がないので我慢して流し込もうと思います。時計はもう十二時を回ってしまったけれど、私はこれからプリンを食べるつもりです。


 太るんじゃないかって?

 太らないって思えば太らないよ!(怒)


 謎に怒ってしまいましたが、今回はこのへんで終わりたいと思います。


 それではまた次回! おやすみなさい!

 

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