No.31 悪役王女と姫の秘密


……ここは一体どこだろう。

あの後、ロワンシェを追いかけようとして気付いたらここにいた。

どこかのお城の大広間みたいだ。天井には大きなシャンデリアがある。

「気に入ってくれた?」

いつの間にか正面には玉座があり、その玉座にはロワンシェが座っていた。当然、その両端にはスフェロンとグレイヴと呼ばれた男が……あれ!?

いつの間にか両端がスフェロン達からシヴェリアとモレアナに変わっていた。

するとロワンシェは私の視線に気付いたのか、にっこり笑ってあぁ、と呟いた。

「この子達な、過保護なんよ……。こーんな国やし誰も来やへんのに『何かあってからではまずい』って交代交代でうちの護衛してくれとるんよ。」

垂れてきた髪を耳にかけながら彼女は困ったように笑った。

「そりゃあそうですよっ!姫は私らの姫ですから!かすり傷でも負われたら困るわ!

それに姫はあの方の―……」

「シヴェリア。煩い。姫のお客の前だよ。」

「……っ。分かったわよ……。」

「まぁまぁモレアナ。そんなピリピリせんの。

そんでフィファナテちゃん!今からうちへの質問たーいむ!なんでも質問してええよ!なんでも答えるし!」

「へっ?」

ロワンシェ切り替え早いな。

それで質問タイムだったっけ……?

色々と聞きたい事はいっぱいあるのだが…今1番気になっている事は……

「どうしてロワンシェ様はその……精霊達から『姫』と呼ばれているのですか?」

「それは姫が姫だからよっ!そんな当たり前の事姫に聞かないで頂戴!」

「シヴェリア!」

「こらこらシヴィ、モレアナ。静かにな。」

「「はい。」」

「……で!なんで姫って呼ばれてるかって〜?

そんなんずーっと昔からやし忘れてもたなぁ……あ、あれかな?うちがあいつらの孫やからかな?」

「……それも、あるけど……姫の人柄も関係してる。」

「そう?嬉しいわぁ。あいつらの孫で初めて良かったと思ったわ。」

あいつら……?誰の事だろう。祖父母?でも自分の祖父母の事をあいつら、と呼ぶだろうか。

疑問に思った私は恐る恐る口を開いた。

「……あの。質問、よろしいですか?」

私が声を出した瞬間、ロワンシェと話していたモレアナの眉間にシワが寄った様に見えた。

「…せやったせやった!かんにんな!で、お次は何?」

「その、ロワンシェ様の言うあいつらとは誰の事なのですか?」

「……あぁ。うちの祖父母の事や。どうにもあいつらの事は好きになれんくてな…。」

怒りの混じったような少々ぎこちない笑みを浮かべるロワンシェ。

これ以上聞くのは辞めておこう。

「それでは…どうしてロワンシェ様はこのような場所に?」


「……ここはさっきの…うちの祖父母がよこした国なんよ。

でっかい“国”やけどうちと精霊以外誰も住んでへんし、子供部屋とそうかわらんのよ。」

今度は幼い子供の様な笑顔を見せる。

よく見てみればどこぞの女神に似てるような……。

気のせいか。

にしても子供部屋…ねぇ。国が?それをあげた祖父母さんはどんなスーパーおじいちゃんおばあちゃんよ。

「……ロワンシェ様のおじいちゃんおばあちゃん何者……なんですか!?」

「……知りたい?」

「は、はい。」

「うちの祖父母はなぁ…ただの人間よ。」

「……へ?」

人間?人間が……国を孫にあげるかな??

少なくとも私そんなスーパーおじいちゃんおばあちゃん聞いた事ないです。

「で、次の質問は?」

足を組んで手をヒラヒラさせるロワンシェ。

どうやら彼女は飽き性のようだ。つまらなさそうな顔をしている。

「……最後の質問です。あなたは一体、何者ですか。」

シヴェリアとモレアナが不快そうに顔を顰める。

ロワンシェは目を見開いて驚いた様な顔をしてからすぐに妖艶な笑みを浮かべた。

「知りたい?」

またこの質問。

知りたいから聞いてるのに。

「はい。知りたいです。」

「……それはナイショ。」

「へ?」

なんでも答えるって言ったのに……。

「なんでも答えるとは言ったけど、これは例外。で、他に質問は?」

「……ない、です。」

「……で、うちとお友達になってくれますか??」

「……申し訳ないけど、貴方と友達にはなれないわ。」

ニコニコと笑みを浮かべていたロワンシェの表情がスッと無表情になる。

背筋が凍る様に怖い。

「……あっそぉ。ならええわ。ヴェルちゃん。」

ロワンシェの声が急に低くなる。

「はい。如何なされましたか姫。」

突然出てきた黒髪の美形男子にロワンシェはくい、と顎で私を指した。

すると黒髪の美形は何かを察したかのようにニヤリと笑い、こう言った。

「姫の御心のままに。」

と……。

怖い怖い怖い!!!何!?うわっ!!えっ!また場所変わったんだけど!!!

なんだか牢屋みたいだな。目の前に格子が見える。

「ここはな、うちの玩具箱なんよ。」

「玩具箱……?」

玩具箱かぁ!なんだぁ!そっか!……いやいやいや。

ちょっと今現実逃避しかけたわ。

「ちょーどご飯エサの時間やね。ついでに挨拶してもらおか!ね、ヴェルちゃん!」

ぱんっとロワンシェが目の笑ってない笑みで手を叩く。

すると黒髪美男子はパチンと指を鳴らした。

その瞬間に数十名の女の人が私の目の前に現れた。目隠しを付けられ、手に枷も付いている。それに体の所々痣や汚れが目立っている。

「うわっ…汚なっ…。ちょっとヴェルちゃん!汚いやん!洗ってからうちの前に出してよ!」

ロワンシェは不快そうな目で女の人達を見下している。

「すみません姫。見苦しい物をお見せして……。」

また美男子は指を鳴らした。

すると女の人達の汚れが消えていき、日焼けもしていない白い肌と青紫の痣が残った。

「……っ。」

痛々しい光景に私は思わず目を細めた。

「よっしゃ!じゃあはい!ご飯やよ!いっぱいお食べっ?」

と、ロワンシェは決して食べ物とは呼べない程の……言うなれば家畜のエサの様な物を持ってきた。

そしてそれを床にぶちまけた。犬のように食べろと、そう言うように。

「まっててなぁフィファナテちゃん!この子らのご飯終わったらすぐお部屋を用意したるで……。」

あっ終わった……。

ヒロインならばここですかさず攻略対象キャラが助けに来るだろう。

だが私は所詮悪役王女。これはもう詰んだ。

それに仮にだよ?私がヒロインだとしたら。

それでもここはどこか分からない鳥籠の国。

はいおめでとう私。

あぁ、これがゲームなら……。ここでさっとGAME OVER

って文字がでてコンテニューが出来る筈なのに。

残念ながらここは紛れもない現実。

私はどうしてこうも事件に巻き込まれやすいんだ。

やはり悪役王女には厳しい世界……。

それにしてもロワンシェ。キャラが変わりすぎではないですか。

あんなにニコニコして優しそうだったのに……。

どうしてこんな恐ろしい子になったんだろう。

それに本来、精霊王を初めとする精霊達は、このような悪事は働かない筈。

ならばどうしてこんなに女の人が監禁されている?

どうしてこんなことになっているのに誰も止めない?

ますます謎は深まるばかりだ。

考えろ。考えるんだ私。この小さい脳みそで……!

まず、この人達は誰だ?

見たところ若いと思う。

まじまじと見ていたその時。突然1人の女の人が私に向かって口パクで何かを訴えてきた。

まず初めの文字は……

『た』

次は

『す』

その次は……

『け』

次は……っ

「ガハッ!」

「!?」

突然鈍い音と共に私に何かを訴えてきた女の人が呻き声を出した。

彼女は床に頭を思い切り叩きつけられたのだ。

……ロワンシェに。

「あかんやろぉ?はよご飯食べな。」

「申し訳……ッ」

「……はぁ……。もうええわ。ヴェルちゃん。ゴミ箱連れてって。もうこの子用済み。」

「御意に……。」

ペコリと礼をして美男子は女性と共に消えた。

ついでにその場にいた女性達もいつの間にか消えていた。きっと元の場所へ戻されたのだろう。

「……あーあ。ヴェルちゃんったら。あの子達にフィファナテちゃんへ挨拶してもらいたかったのに……。」

はぁ、とため息をつきながらロワンシェは言った。

早く。早くロワンシェがこの場を去ってくれれば。が使えて助けを呼べるのに……!

「……ふぅ。汚いものみたし穢れてしまったわ……。

お風呂入ってうちはもう寝るからフィファナテちゃんはここで寝といてね。ベッドはそこにあるやろ?

……そうそう。逃げようなんて思わんといてね。痛い目見るで。

じゃあまた明日。」

笑ってない目で口角を上げてみせたロワンシェはどこかに消えていった。


……思惑通り。


私はニヤリと笑ってゴソゴソと秘密兵器を探した。





+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+


遅れてすみません……と、


もう1話か2話続きますごめんなさいm(*_ _)m

急展開だし言葉が可笑しい、誤字脱字等あればご指摘くださると幸いです!

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