No.25 悪役王女のドタバタ夏休み~街にお出掛け編~


「……フロウ。」

「なに?なの。」

「……これは流石に、駄目では……。」

横に吊るされているのは、レイとリンヴェル。

フロウ曰く、『フィアが掴んでいたとはいえ、1日も居着く必要は無かったの。王女の部屋で寝るなんて巫山戯てるの。よって、吊るしといて上げるの。監視しやすい様にと、見せしめとしてフィアの部屋でね。』

らしい。

流石に隣国の王子達を吊るす訳には……。

「…仕方ない。フィアが言うから!仕方なく!外すの。分かったの!?」

なんて言いながらシュルシュルと縄を解いていく。

「……フィア、なんでなんも言わなかったんだよ……!!!」

「……ちゃんと言ったじゃん!駄目では?って。もっと感謝して欲しいんだけど!!」

「…………それにしても……フィアって、色んな表情見せてくれる様になったよな。

前までつーんてしてたのに。

なんと言うか……かわ……ん”ん”っ。やっぱなんでもない。」

「そうかな……。で、なんて言おうとしたの?」

「なんでもない……」

先程の咳払いが気になる。

それに顔を赤くして何を話してるんだ。

色んな表情か……。

確かに、気を張らなくなった言うか……なんと言うかだな。

それにー……

「おはよう。フィア。大丈夫だった?」

カチャリと音がして視線をやると、ユーリが立っていた。

「ユーリ!!!ユーリも大丈夫だった!?なんでここに!?今1人!?」

「……フィア、聞きすぎなの。ユーリが困ってるの。」

「あの、えっと……私は大丈夫だったよ。それで、フィアが心配だったから来ちゃった。

1人じゃないよ。ベリルさんも来ているの。」

1つずつ丁寧に返してくれるところが凄く優しいし可愛い。

ユーリも少し長い前髪とか弄ったら可愛いよな……後で試してみよう。

「フィファナテ。僕の事忘れてない?ねぇ、ちょっと。」

「あぁベリル。ごめんなさい。忘れてなんかないよ。」

「……本当に?」

「本当に。」

拗ねた様な表情を見せるベリルに少し可愛いと思っていると……


ギュ


突然何かに締め付けられた様な……。

なんとなく、嫌な予感がする。

ゆっくりと下を向くと……。

綺麗な、深い、森の様な髪……

「……ベリル。なに、これ。」

「……フィファナテ、僕の事好き?」

「うん。好きだよ??」

場が一瞬凍りついたのだが、なんでだろうか。

「……ふふ。僕も。」

ニヤリと笑うベリル。

ぎゅーっとまた抱き着く腕を強める。

そろそろ苦しいんだけど……。

「おっ、おま、抜け駆けはナシって話したじゃ……」

「兄上、フィアがここにいるんですよ。

……だけど。ベリルさん、抜け駆けは、駄目だと思いますが。」

抜け駆け?よく分からないが、取り敢えずリンヴェルの笑顔が物凄く怖い。

「……分かったよ……。」

はぁ、と名残惜しそうな顔をし、ベリルは手を離す。

弟に抱き着かれている気分だった。

ベリルはヤンデレじゃなくて弟キャラじゃないか……?

「……言っとくけど、僕はフィファナテの弟じゃないからね。」

「えっ、あぁうん。知ってる、知ってるから叩かないで……。」

ポカポカと叩いてくるベリルの手を抑えながら苦笑を零す。


するとユーリがなにかを思い出したかのように話し出す。

「…あ、そうそう!私、フィアに話したい事があって……」

「私に??」




+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+


「街で今話題のパフェを食べたい???」

「う、うん。美味しいって話題で……それに!平民も貴族も、差別しない所なんだって!ここら辺で珍しくない?……でもフィア病み上がりだし王女様だし……駄目かな……?」

ちょ、上目遣いとか何処で覚えてきたの!?

お母さんそんな子に育てた覚えないわよ!?

「大丈夫よユーリ。変装して行けばー」

「姫様?」

あれ。

……嫌な予感しかしない。

こんなに、聞き慣れていて、でも久しぶりに聞くこの声の主……


「メッ、メリア……」

「お久しぶりです。実家で色々ありまして……陛下からは許可貰っていたので大丈夫です。

……で、街に?また?行くと???変装すればー……の続きが聞きたいものですね。」

「ひえっ……。久しぶりに会った主に説教なんて!」

「私説教したくないんですが。させないでください。」

「えっ……そんな真顔で言う……?」

「あっ、あの、ごめんなさい、私が誘ってしまったから……!」

「……貴方は……パイロフィラ子爵の……」

「はっ、はい!ユーリ・パイロフィラと申します!」

「……フィファナテ様の侍女をしておりますメリアです。」

「……メリアさん……!宜しくお願いしますね……!」

「えぇ……宜しくお願いします。」

全く、挨拶の時位もう少し笑顔に出来ないのか。少し目が死んでいる。

「ところで姫様。本当に街に行くつもりですか。」

「?ええ。勿論よ。」

「そんな真顔で……分かりました。ただ姫様の髪の色は大変珍しいものですからね?カツラを被るか魔法で染めてください。分かりましたか?」

「えっ!?良いの!?やった!!メリア大好き!!早速準備しましょユーリ!!私の衣装部屋にレッツゴー!!!」

「えっ、あの、フィア!ちょっと……」

そう言うと私はバーンと自分の部屋の扉を開け、ダッシュで走る。メリアが「はしたないですよ!」と叫んでいたが、楽しみなものは仕方がない。





+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+


「これとか似合うんじゃない!?あ、これも……。やっぱりこっち……?」

ゴソゴソとクローゼットを漁り、バサバサと服を出していく。

平民の服だ。メリアにめちゃくちゃお強請りして取り寄せてもらったんだよね。

しかし……ユーリに似合う服が多すぎる。ユーリは着せ替え人形みたくなってるけどしょうが無いよね!!うん!!

「あ、あのフィア……私これでいいよ……!」

「えー、そう?まぁそれも似合うから良いでしょう!!

……さて。服も決まったことだし……

ちょっとその髪の毛、弄ろっか?」

「ひっ、お助け……」



+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+


「……いや、ユーリ貴方……

可愛すぎじゃないかしら。」

少しボサボサしていた黒髪は、少しとけばサラサラになった。

本人に了承を貰い、毛先を整えたり、前髪を結構ざっくり切ると、ルビィの様な瞳が顕になり、日光でキラキラ輝いて凄い綺麗だ。

「そんなお世辞を……。」

「お世辞じゃないわよ。さ、私の準備もしないと……。」

タタタと散らばっている服の元へ行き、素早く着替える。

「……魔法使うの面倒だし、カツラ被りましょ!」

決して魔力が全然なくて絶対すぐに効果切れそうだからではないからね。

断じてそんな訳ではないから誤解しないように??


私が被ったのは綺麗な深い青の髪。

思い切ってカツラはボブカットにしてみた。

ふっわふわすぎる毛を纏めるのにどれだけ苦労したか。


「ユーリ!皆のとこに行くよー!」

「……ひぇ……無理……こんな髪で行くの無理……。前髪……」

「いーじゃんか!似合ってるから!可愛いよ!」

「……無理……無理……」

「さ!行くよ!」

その場から動こうとしないユーリを引きずり、自室で待っている皆の所へ向かう。




+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

「……え、お前フィア???めっちゃ変わるじゃん……。」

「おだまり。スノア、フロウー!着いてきてねー!行くよーいってきまーす」

「凄い流れで言う……」

「あれがフィアでしょ。兄上。」

「……そうだな。」



+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-


「街!久しぶりね!」

「フィアも来たことあるんだね。私、こういう所あまり来れないんだ……親が厳しくて……」

「私は「親」には言われないけど│メリアに色々言われるから……。」

「あはは……。……あ、ねぇフィア!ここ!パフェ!」

「え、超オシャレな所じゃない!凄い!こんな所が合ったなんて……。」

ダークブラウンを貴重とした店の外見に、全面ガラス張りな為、オシャレ度up。とにかくすごい。

「そうだね……。ねぇフィア、入ろ!」

「うん!」

カランコロン…

音がする戸を開け、案内された席へ座る。

外見が綺麗な建物は、内装まで綺麗なのか……。

観葉植物や花が置いてあり、ダークブラウンの壁と床によく合う。

昔ながらの喫茶店に来てるみたいだ。

「いい雰囲気だね、ユーリ!」

「…そうだね。綺麗……」

暫く話をしたり店内を眺めていると、店員さんがパフェ2つを持って此方へやって来た。

「パフェお持ちしました〜!ごゆっくりー!」

「ありがとうございま……!?」

受け取ろうとすると、店員さんが私たちのテーブルにパフェを投げつけたのだ。

生クリームやイチゴなどのトッピングがテーブルに散らばる。

店員はニヤニヤと笑っている。ここでは平民は歓迎されていないのか??

でもユーリの話によると平民も貴族も対等に扱うのでは……?

「すいませーん。でも平民さんでしたら、この位食べれますよね。」

うっわなんだこいつ腹立つわぁ。

……仕方がない。正体を明かすしかないか。この状態を止めるには。

「……そう。では、王女様だったらこれは食べれないかもしれないわね?」

パサリとカツラを取る。

「美味しいと聞いてお忍びで来てみれば……ここは平民や貴族、“差別をせず”来れて楽しめる場所ではなくて?

……期待外れね。」

店員の顔が青ざめている。当然だろう。

「あぁ因みに、こっちの女の子はユーリ・パイロフィラ。パイロフィラ子爵令嬢です。貴方達、こんなこと続けてると……。

どうなっても知らないわよ?」

悪役王女らしく、悪い顔をして笑う。

小2でもかなり迫力はあるのか、店員が尻餅をついている。

「……胸糞悪いわ。この事は、お父様達に報告しておくわね。では、御機嫌よう。行きましょうユーリ。」

「えっ、あっ、うん……」

にしても。この│悪役王女にこんなことをするとはね。平民に変装していたとはいえ。

これから、あの喫茶店が変わってくれれば良いけど……。




「許さないわフィファナテ・ディア・センテュリオ……。よくも私たちに恥をかかせて……!子供だからって容赦しないわ。いつか必ず復讐してやるんだから……。」

そう呟く女の声は、人々の声で掻き消えた。




+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

更新遅れてすみません( ˊᵕˋ ;)

あと前置き長すぎますね……。ごちゃごちゃと色々詰め込んでいるのは見逃してやってください……文力皆無なんですよね。


~お知らせ〜

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