No.24 悪役王女のドタバタ夏休み~宝石の花編~《後編》


「目を覚ましたか!?」

「……フィア……心配かけないで。」

今にも泣き出しそうなレイとリンヴェル。

私別にショックで倒れたワケじゃないんだけど、心配をかけたのだろう。

「ごめんなさい、心配かけたわね……。」

むくりと起き上がる。

「……フロウとスノアは来てる?」

「いや、来てない。」

「……来てない」

「そう。」

どうしよう。犯人が分からないままでは手の施しようがない。

悩んでいると、フロウとスノアが戻ってくる。

「……犯人が、特定出来たの。」

「……此奴で間違いない。」

宝石の花を、盗みそうな人。

1人、私とは真逆の人が思い浮かぶ。

「……シーナ・ドライド。

……とにかく。行って聞かなければー……」

「ちょっと待て。」

「え?」

間抜けな声が漏れる。

「……お前、この嵐の中その……シーナ・ドライド?って奴に会いに行くのか!?」

「そうよ?」

「そうよ?じゃなくて……。お前にもし怪我とかがあったら……っ。」

レイが泣きそうな顔をして言う。

私は無意識にその頬に触れる。

「……大丈夫。私なら大丈夫。」

微笑むとレイは硬直してしまった。

リンヴェルはどこか怒った様な、拗ねている様な顔になっていた。

レイに触れる手を離し、私は立ち上がる。

「……スノア。着いてきて頂戴。」

「了解」

「フロウは、私のフリをして欲しいの。

ここへ万が一兵士が来たら、姫様姫様って騒ぎかねないから。」

「了解なの。」

フロウはそう言うと、瞬く間に私の容姿になった。

その姿を見た私は自身で作成した転移魔法でシーナ・ドライドヒロインの元へ向かった。




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「……っ、なによ。王女サマ。」

「……宝石の花を返して頂戴。」

あぁ、花を摘んだ者は怪物化すると言われていたが……きっとオベリスクが止めていたのだろう。未だに綺麗な顔のままだ。

「いっ、嫌よ。返さないから。こんなに綺麗なんだから、誰かが付けてくれなきゃこの花が可哀想よ。

あぁ大丈夫。ヒロインは死なないの。死ぬのはいつだってアンタ悪役なの。」

「……どれだけ綺麗でも、これでは皆に迷惑がかかる。貴方は白百合の塔に5年間監禁するわ。

……それに、人は誰でもころっと死んでしまうのよ。悪役でもヒロインでもね。」

そう言うとシーナはキッと私を睨み、舌打ちをしてから宝石の花を差し出してきた。

案外素直に渡してきたのに少々驚いていると、宝石の花が私の手に渡る直前にシーナがパッと手を離す。


……まずい。


瞬く間に宝石の花は落ち、パリンと音を立てて粉々になる。

粉々になった花に追い打ちをかけるようにシーナが靴で踏む。

その瞬間、風や雨が強まった気がした。

「あらぁ。こんなに直ぐに割れるのね。

ねぇ王女サマ?お宝、壊れちゃったけど。どうするぅ?」

ケラケラと笑うシーナヒロイン

自分がどんなに重大な事を仕出かしたのか、まるで分かっていない様だ。

「……スノア。」

「はい。」

「枷を付けて白百合の塔へ。」

「……了解。」

そう言うとスノアが薔薇の枷を付ける。

魔力封じの枷だ。Ⅰとは言え、闇の精霊王ヴェルメイの加護を与えられている。

暴れられたら困ったもんじゃない。

「……スノア君って言うの?カッコイイのね。

可哀想に。この悪女に弱みでも握られてるのね……。

なんて悪女なのフィファナテ様!!」

スノアが出てきた瞬間、シーナは目の色を変えてスノアの腕にしがみつく。

それをスノアは嫌悪感満載な表情で跳ね除ける。

「馴れ馴れしく触れるな糞野郎。それに軽々しく名前を呼ぶな。主の名も、俺の名も。

俺と主は契約をしている。弱みなど私は見せないし、主は悪女ではない。お前の方がよっぽど悪女だろう。顔だけの能無しめが。

……いや、顔もダメダメだな。まだあのお転婆娘の方がかわ……良い顔立ちだ。」

ひえっ怖……まるでゴミを見るかのような目だ。

それにしても……今フロウの事「可愛い」って言おうとしたな?この野郎。結婚しちまえ。

……あ、こんな妄想をしている場合ではない。

直ぐにでも白百合の塔へ送らなければ。民の危険が……

「……くだらない茶番は終わりよ。

スノア。連れて行きなさい。」

「了解。」

「あっ、ちょっと!」

あっという間にスノアとシーナが消える。

数分もすれば嵐は止むだろう。

パチンと指を鳴らし、フロウを呼んだ所で私の気力は途切れた。





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「……ん……ぅ……?

……は?」

パチリと目が覚め、パッと横を見ると……

レイとリンヴェルがすうすうと寝息を立てて寝ている……何故ここに!?

いや、部屋帰れよ!?ダメでしょまだ子供とはいえ未婚の女性の部屋に泊まるなんて……。

……。

……あれ?なんか私、リンヴェルの服ガッシリと掴んでません?あら、私が引き止めてた?

……ごめんねリンヴェル!!本当にごめん!!

…でも、なんでレイまで?……ま、いいか……。


それにしても。

なんて綺麗な銀髪に金髪……。

私はむくりと起き上がり、その2人の美しい髪に触れる。

2人共さらさらだなぁ。

暫く髪を触っていると、2人の髪でなんだか遊べそうな事に気付いた。


「……できた。」

我ながら上手く出来た!!

レイは私のバレッタでハーフアップに。

リンヴェルは髪の毛が短いので編み込みに。

2人共無駄にまつ毛が長いから女の子に見えるんだよなぁ。

リンヴェルなんてもう女子やん。

ショートカットの女子やん……。

「……ん。」

「あ。」

まずい。リンヴェルが起き……

「……あれ、フィア……?目が、覚めたんだね……。良かった……」

むくりと起き上がるリンヴェル。

あれ、視線がレイに……あ、それもまずい。

「……あれ。兄上の髪……」

リンヴェルがレイの髪を見つめる。

そして何かを察した様に自分の髪に触れる。

「……フィア……」

「……ハイ……」

「なに、これ。」

「……可愛くしてみました…」

「へぇ〜……人の服掴んで、出れない様にして、目覚めたら髪弄り……?」

「ゴメンナサイ。本当にごめんなさい」

なんかリンヴェルが怖いんですけど!

そんなに睨まないで……。

「……まぁ良いけど……。

……そう言えば……ねぇフィア。それ、付けてくれていたんだね。」

それ、とはきっとイヤリングの事だろう。

デザインも可愛くて意外と気に入っているのだ。

「うん!可愛いからね!」

「……良かった。」

クスリと笑うリンヴェル。

釣られて笑っていると、レイが目を覚ました。

「……お前、大丈夫なのかよ!?4日も寝たきりだったんだぞ!?」

「え!?そんなに!?大丈夫!ピンピンしてるけど!」

「ならいいや……。ってそうそう!お前昨日見舞いに来た時にリンヴェルの服ガッシリ掴んでたんだぜ!?

まぁ二人っきりだと誤解されかねないから、俺も留まったって訳。」

いや男2人とってのも駄目だと思いますけど……。

心配かけたなぁ……って。

皆に心配しかかけてなくない?私。

「迷惑お掛けしました!あと心配してくれてありがとう!」


にっこりと笑うと2人は優しく微笑んだ。

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