No.22 悪役王女とテスト
風邪を引いた日から一週間が立った。
来週にはとうとう夏休みだ。
私の耳には、リンヴェルからもらったイヤリングがついている。
お気に入りなのでガーネットのネックレスも、共に付けている。
「……眠いわ。」
「……ちょっとフィファナテ。そんなこと言わないで……ふぁ……。」
「ところで。どうして勉強会なんてやってるんだろう……。楽しくお茶会って聞いたんだけど!?」
そう。今私達は、男子、女子寮の間にある共同スペースにて、勉強会をしているのだ。
レイから“お茶会”と言われて来たはいいものの、行ってみれば勉強会ではないか。
「……お前らの宿題や勉強が、全く進んでないからだよ!多分もうそろそろ、明日位に全問題テストがあるんだぞ。」
説明しよう。
全問題テストとは、国、算、理、社、の難しい問題が激選され、全部詰め込まれている。予告なしにこの全問題テストが行われる為、生徒達はいつもいつもピリピリしている。いわばこのテストは、この学園名物(?)のテストだ。
……小学二年生では、理科と社会は習わない筈なんだけど。
「……全問題テストがあるなんて聞いてないんですが。」
「そりゃお前全問題テストはほぼ抜き打ちテストの様なものなんだから。」
私が撃沈していると、レイがため息混じりにそう話す。その横ではベリルが勉強をー。
……ベリルは寝てしまっている。レイがそれを咎めないのは、自分が困るだけだろ、だそう。
「レイ、多分これ全部できるわ。」
「がんばれ。」
つーんとレイが返す。
そういえば私、ディアカルマ先生に天才と呼ばれていた。
ここで目立たないように真ん中を狙って解いていけばいいよね!
なんだー。こんな所も含めて天才じゃない私!
ふふんとガッツポーズをしていると、レイがじとーっと見ている事に気付く。
「……そういえば、どうしたんだよ。」
「何が?」
「…………そのイヤリング。」
「あぁこれ?これねぇ。リンヴェルに貰ったの!綺麗でしょ?」
「……リンヴェルが……。」
ボソリと呟き、なにか考え事をするように顎に手を当てている。
一体なんなのだろうか……。
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
「……それでは、テストを返します。順番にきてください。」
先生が前に立ち、淡々と名前を呼んでいく。
……やばい。めっちゃ緊張してきた。
「……次。フィファナテ・ディア・センテュリオ殿下、前へ。」
おっと。私の番だ。
席を立ち、ディアカルマ先生の元へ行く。
貰う時に目がキラキラしてたのは何なんだろう……。
さっと席に戻ろうとし、自分の席へと向かったその時……。
「うわっ。」
何かに躓いた様にバランスを崩した。
チラリと横を見ると、足を出したであろう令嬢がクスリと笑っていた。
低レベルだな……。
なんて思いながら何事も無かったかのように自分の席に戻り、すとんと座った。
さて。お楽しみのテストの点数は……。
4教科、400満点中、398点。
……え?
嘘。え、これ間違いじゃないの!?
ヤバい、中学生の数学とかなんて、全く覚えて無かった。昔から記憶力は悪い方なのに……。全部適当にやってれば……。
絶対こんなの見せたら……超目立つ。
駄目だ。馬鹿な私が本領発揮しすぎて最早神に等しくなっている……。(?)
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
「なぁ、テスト何点だった?」
「……言わない。」
「俺は……なんと!212点!!凄いだろ!?もう天才だぜ!」
「ワッ、ワー、ス、スゴォーイ……」
「今回は手応えがあったと思ったら……。
こんなに凄かったなんて……。」
うんうん、とレイが自画自賛している。
212点が凄いんだな……。
ま、私398点だけど。
「なー、ちょっと見せろって!」
バッと私からテストを取り上げる。
……まずい。
「……えと、その……」
レイは硬直している。
どうしたんだろう……。
私の点数ってそんなにやばかったのか……?
「天才じゃねーかお前……。」
ガックリと肩を落としたレイがテストを返してくれる。
「……ありがとう……?」
私のテストを見て以来、今日1日レイの元気が無かった気がする。
どうしてだろう……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます