No.18 悪役王女と新しい友達


「おっす。」

「うわっ……おはようございます。レイ。」

てくてくと教室に入ると、レイがにゅっと出てきた。

正直めっちゃ驚いたが、まぁ皆居る中で野太い声を出す訳にはいきませんからね……。

「おはよう!フィファナテ!……と。……おはようございますレイゼルア王子殿下。」

急に声のトーンが落ちたのは何故だ。まぁ声変わりしていない低い声なので、あまり怖くはないのだが……。

「……っあぁベリル……と言ったか?おはよう」超真顔。こっわ。今にもベリルを殺しそうな勢いで睨み付けてる……。

「あの。すいません、通れないです。」

「あぁ、ごめんなさ……きゃっ。」

なにやら怖めの雰囲気の人が、私にぶつかり、無言でベリルやレイとの間を割くように通り過ぎた後、他の人達とクスクス笑っている。

なんか最近こんな様なことばかりあるけど……。もしかしたら。


私、遠回しに虐められてます……?


「……殺すの?」

「物騒な事言わないで。」

フッと現れたフロウ。

なんだか手がバチバチ言ってるんですが。

怖いのでしまって下さい。

「……それじゃあ粛清に行ってくるの。ちょっと待ってるの」

「あ、ちょっ……」



「おいクソガキ共。群れになって良い気で居るようだけど、少しは自分の身分を理解した方がいいの。お前らが今“わざと”ぶつかって謝りもしなかった人は、大国の王女なの。その意味、ちゃんと理解しているの?」

「……なによ!メイド風情が偉そうに……。大体、あの王女が悪いのよ。あんな男を侍らせて。調子に乗りすぎなのよ…」

「そ、そうよそうよ!あの創造神様達からの加護だって、何かインチキをして表示を変えたに決まってるわ!」

「……今すぐ、お前らを殺してもいいの。

それをしないのは、フィアが嫌がるから。

お前らが生きてられるのは、フィアのお陰と思った方が良いの。」

「ひっ……。ごめんなさあああい!」




良く聞こえなかったのだが、何故か令嬢達がその場から瞬く間に去って行ったので、取り敢えずフロウが怖い事を言ったのは分かった。

「退治して来たの!!」

褒めて、と言わんばかりに目を輝かせるフロウは、いつにも増して少女の様に見えた。

にしても可愛いなぁ。ヒロインじゃないかと思うくらいに可愛い。

頭を撫でてあげようとした瞬間に休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴る。

残念そうな顔でフロウが消え、私は席に戻った。




「はい。今日は2人ペアを組み、共に色とりどりの花々を咲かせて見ましょう。えー、綺麗に花を咲かせる為には…………」

ディアカルマ先生が前に立ち、授業についての説明をする。

さ、私もペアを見つけて花を…………。

あれ?

もしかして私ボッチ?

レイとベリルはいつの間にか他の子と組んでるし……。

あ!いた……。キョロキョロと周りを見渡し、あたふたしているいかにも同類そうなあ人。赤い制服……。うちの出身!!

「……ねえ、そこの貴方。」

「ひっ、えっ、あ、はい!私……ですか?」

「えぇ。良ければ、私とペアを組んでくださいな!」

「……え、あ、あの、はい。よろしくお願い、します……?」




女の子は、ユーリ……。ユーリ・パイロフィラ。パイロフィラ子爵の一人娘だ。

ユーリはあまり見ない黒髪で、メガネをかけていた。

前髪が長くてあまり顔が見えないのだが、綺麗な赤色の瞳だった。


「…あ、あの、フィファナテ様は、なんで私をお誘いに……?見ての通り、私は暗いですし……。」

同様のボッチだったから、なんて口が裂けても言えないので……。

「……黒い髪が、珍しくて…綺麗だったからかな……」

「え?」

ユーリがポカーンとなっている。

ヤバい。変態だと思われたかもしれない……。

「あ、あの、決して変態では……」

「ありがとう、ございます……。この漆黒の髪も、赤い瞳も、私にとってコンプレックスだったんです……。魔王みたいって、兄達から言われていて……。」

「そんな事はないわ。とても綺麗よ?少なくとも、私は好きだわ。そうだ!私達、お友達になりましょう!」

にこ、と微笑むとユーリがぽろぽろと泣き出した。

「えっ!?あ、あの、えっと、ユーリ??」

「ご、ごめんなさい……。お友達になりましょうなんて、言われたの、初めてで……

でも、王女様と子爵令嬢なんて、釣り合わないんじゃ……」

「友達に身分なんて関係ないでしょ?私の事はフィアって呼んでね!敬語も使わなくて良いから!」

そう言ったらまた泣き出してしまった。

「……あと10分です。早く咲かせれた人は、此方へ花を持って来て下さい。」

「あっ!ユーリ!早く咲かせなきゃ!」

「はっ、はい……。」





その日も、ディアカルマ先生が泣きついてきた。

先生が授業をする度に私の所に来てやめてほしい……。

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