No.17 悪役王女と後輩王子達


今日は入学式。

リンヴェル達が入学してくる日だ。


私は、2年生になった。

隣に座るレイは凄く緊張しているようだ。

なんだか違う意味でこっちがドキドキしてくる……。

今日の入学式の代表挨拶は、リンヴェルがやる事になったらしい。

忌み子より私の子に挨拶を、と言う親がいすぎて対処しきれなかった位と聞いている。


「えー、続きまして、新入生代表、リンヴェル・ベニトアイト王子殿下。前へどうぞ。」


「やだ。忌み子じゃない。」

「第2王子が忌み子だなんて。」

「気持ち悪いわ。」


ちらほらと聞こえてくる声。

全員殴り飛ばしてやりたい。なんて事は死んでもやりませんけど。まぁ嫌がらせ位なら……。

「えい。」

女の子達目掛けて魔法を打つと、失敗してしまったのか、頭にぽぽぽんとチューリップの花が咲いた。

「ンブフッ……。失礼。」

思わず吹いてしまった……なんて言ってる場合じゃないな。うん。

「……魔力解除。」

ぽそりと呟くとチューリップの花が消えた。

「なに喋ってんだよ。」

「あぁレイ。なんでもないです。ほら、リンヴェルの話を聞かないと。

「…ん。」

なんだかレイがムスッと拗ねた子供の様な表情になる。一体どうしたと言うのだ。

ちらりと正面のリンヴェルを見ると、パチリと目が合った(気がする)

リンヴェルはレイと似たような表情を浮かべていたような気がした。

やはり兄弟。似ている。

にしても、私にはそんな拗ねる理由がわからない……。

「……なぁ、フィア。」

「なんです?」

「……寝ていい?」

「駄目に決まってるでしょ。フロウを呼んで監視させますか??」

「ゴメンナサイ」

なんだか最近、レイが良く話しかけてくれている気がする。

心を開いてくれたのだろうか?それとと、元からこんな性格だったとか……。うん。多分元からだ。

……そういえば、“恋学”ではレイが唯一本当に心を開いた人がヒロインだったんだっけ……?昔、私の国センテュリオの街にお忍びで出掛けて、男に絡まれているヒロインを助け、徐々に自分の事を話していく。

高等部の時に出会ったヒロインに運命を感じてー……って感じだったんだっけ?

……あれ?これって、なんだか……

私とリンヴェルの出会いの時の事みたいじゃない。

え?どういうこと?私のせいで、運命シナリオが狂ったということ?

もしかしたらヒロインも、なにか変わっている可能性がある。

その変わりようが、良い方なのか悪い方なのかが、問題……。

ヒロインは、どんな子だろう。

可愛いのかな。綺麗かな……。

いや、でもフィファナテだって負けてはいない……筈。


「……フィファナテ、どうしたの?」

「へっ?あぁベリル……。大丈夫です。なにもないわ。」

「……ふーん。ならいいけど。」

ベリルがにゅっと後ろから出てきた。

多少ビックリしたが、心配してくれていた様だ。




リンヴェルの挨拶が終わり、入学式も幕を閉じた。








+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+



「フィア、僕の話聞いてなかったでしょう。」

「ふぇっ?ち、ちゃんと聞いてたわよ!失礼な……!」

入学式、新入生の説明会が終わった頃、廊下でばったりとリンヴェルに会った。

「……兄上と楽しそうに……。」

「え?リンヴェル、何か言った?」

「ううん。じゃ、僕寮に行くから。」

たたた、とリンヴェルが立ち去る。

何を言ってたのだろう……。

「……フィファナテ。さっきの子って……。」

「あぁベリル。可愛い後輩で、お友達です!」

「……あいつ絶対……。まさか王子2人を堕とすなんて……。」

「ん?今なんと?」

「なんでもないよ。じゃあねフィファナテ。また明日。」

「え、えぇ……。」

リンヴェルといいベリルといい何を言ってたんだろう……。

まぁいいか。

今日のおやつは確かプリンって言ってたな……。



フロウの作るプリンって、何気に美味しいんだよね。


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