No.15 対面と雑談


王子達の騒動が終わり、数十日がたった。私が一瞬で姿を消し、暫く帰ってこなかった事は、目を離したフロウといなくなった私でメリアにお説教されていた。


冬休みも幕を閉じ、再び学園に戻ってきた。


私はもうすぐで小学2年生になる。


「ねぇフロウ……なにか面白い事ない??」

「こっちが聞きたいの……。フロウも暇なの……」

だらーっと2人でベッドに撃沈している。

……まぁ、メリアに見つかればその時点で私達のおやつ抜き期間は伸びてしまうのだが、その心配はない。メリアはエレメージェに帰っている。少し遅い冬休みだ。

「そうだ。フロウ、ゲームの事はオベリスクから聞いてるのよね??」

「……まぁ、大体は、なの。」

「……ヒロインは、高等部になってから来るのよね。」

「その筈なの。」

「……リンヴェルも、レイも、ベリルも、みーんなヒロインの所に行ってしまうのよね。ヒロインとくっついて私はまったりと過ごしたいけど、いざヒロインの元へ行ってしまうとなると、寂しいところもあるわよね。」

私がくるんと仰向けに寝るとフロウも仰向けに寝る。

「…断罪は、されるかしら。ヒロインがもし悪だったら。きっとレイは彼女の言葉を信じるわね。私は、殺されるかしら。」

「……本当に悪いのか証拠がない限り、大国の王族は裁けないの。個人の気持ちだけじゃ、人は裁けない。ましてや殺すなんて以ての外なの。安心していいの。暗殺でもしようものなら、フロウが殺すの。」

フロウが優しく微笑む。いつもならそんな言葉は使ってはいけない、と叱るのだが、今は良いと思った。なにより、そう言ってくれた事が嬉しかった。

「……いくら、たくさん加護を持っていても、フィアは魔力が少ないの。それに、人間は脆い。すぐに殺されてしまうの。それは妖精も同じ。だけど、襲われたら迷わずフロウを呼ぶの。フロウの魔力を、フィアに貸すの。」


昔、本で読んだ事がある。

妖精が魔力を貸すのは、敬愛の印。

貸す魔力が少なくても、信頼が強ければ強いほど、使える魔法はより強力になる。と。


「……ねぇフロウ。ありがとう。私のためにそんな事まで考えてくれてて。」

「……別に。フィアの為じゃないの。……それに、もしフロウが駆け付けれなかったなら、精霊……フィアの場合は精霊王を召喚するの。」

「またまた~……って。精霊王を、召喚?」

「そうなの。基本的に加護レベルIIIから精霊達

が召喚できるの。III以下で召喚する人はそういないの。相当な執念を持っている人以外は。」

「……へぇー……それじゃあ、私も召喚できる??」

「できるの。名前を言うだけなの。精霊王は1人ずつ名前が付いているから、覚えるの。それに、複数の精霊王を1辺に召喚する場合ー……」

先生の様に教えてくれるフロウ。

「精霊王達よ、我が元へ集え!……とか言ったらくるのかしら?……なーんちゃって~……これで皆来たら凄いよねー……」

「…フィア…!本当に…全員来ちゃうの!」


「なんの用だ。」「……久しぶりにこっち側に来たかもしれないわ!」「……眠い。」「これは中々豪華な部屋だな!」


「え?」

声の聞こえた方へ体を起こすと……。

5人の男女。

「……あなた達は……?」

「なに言ってる。お前が呼んだのだろう。我等は精霊王だ。」

「は?」

代表的な男が話す。チラリとフロウを見ると頭を抱えている。


……やっちまった。


「……して、我等を呼んだ訳は?」

ギロリと明るめなグリーンの髪をした男が睨んでくる。

「え、えーっと……なんか……言ったら本当に来ちゃった……的な……。

とりあえず、ごめんなさい!!!」

「……まぁ良い。では我等は帰るぞ。」

「お待ちください」

金髪の綺麗なお姉さんが男に話しかける。

「やはり初めましてですし、挨拶はしておかなくてはならないでしょう?」

「……一理ある。…風の精霊王スフェロン。馴れ合う気はない。」

「私は光の精霊王ユレイゼです。宜しくお願いします~」

「大地の精霊王アスメリスだ!宜しくな!」

「炎の精霊王モレアナ。」

「水の精霊王シヴェリアよ!崇めなさい!!」


色々とそれらしい人がいっぱい挨拶をしてくれている。混乱しすぎて何が何だか分からなかった。


「……挨拶は済んだ。帰るぞ。」

「そうですね。私としてはもう少しいたいのですが、精霊達が困惑してしまいますもの。」

ぞろぞろと精霊王達が帰ろうとしている。


「……あの、わざわざ来てくれて、ありがとうございます!」


わざわざ来てくれたんだから、せめてお礼くらいは言わなければ……と私は声を出す。すると金髪のお姉さん……光の精霊王ユレイゼが微笑む。綺麗な人だなぁ、と思っていると、瞬く間に皆消えてしまった。


「……馬鹿なの!ちゃんと人の話を聞くの!!」

「……フロウは人じゃなくて妖精じゃない……」

「そんなことどうでもいいの!!!」

「いたっ!?」

私がいつもやっている様に、軽くチョップをしてくる。

「反省しています……。」

「宜しいなの。」


溜息を付きながらもフロウが許してくれた。

それにしても精霊王達、凄い個性的な人達だったなぁ……。


+-+-+-+-オマケ 精霊王達の雑談会+-+-+-+-


「……なんか変な奴だったわね。なんで私あんな子に加護与えたのかしら……」

「全くだ。我ながら気が狂っていたのかもしれんな……。」

「皆はなんであの……フィファナテ?に加護与えたの?」

「……面白そうだったから。」

「言われて見ればなんでだろう……可愛かったからかな!!あれ程美しい姫君なんてそういるまい!」

「私は、あの子の心が綺麗だったから、かしら……心が綺麗な人は、精霊達を惹き付けるのよ。現に、妖精が着いていたわ。」

「……あの妖精、他の妖精とは違う。あの妖精はきっとオベリスク様直々に作られた妖精だ。魔力の量も桁違いだろうな。」

「…人間の姿になってた。本当はもっと小さい筈。」

「色々含めて、あいつは何者も惹き付けるのだろうな……」

「なぁ、あいつはどうなったんだよ。ほら、ヴェルメイ闇の精霊王の加護貰ったあの……シーナ・ドライド?ってやつ。」

「……あぁ、あの女?あの女頭可笑しいわ。要注意ね。なんでも自分は“愛の女神”の加護を持っている、と周りに豪語しているらしいわ。自分が闇の精霊王の加護を貰っているのを知らない事と、あいつがフィファナテが愛の女神の加護を持っている事を知らない事が、唯一の救いってとこね。」

「…フェリスシアナ様がそんな奴に加護を与える訳なかろう……。薬物中毒者ではないのか。」

「まぁ人間ですしね……。妄想をしてしまうのは仕方の無い事だわ……」

「まぁもう良いだろう。俺は帰る。」

「では私も~」

「私も!!」

「俺も帰るかー」

「……ん。ボクも帰る」

「「「「では、解散!」」」」

「モレアナ、あんたも言いなさいよ……」

「やだ。」

「しまらないなぁ。」


同時刻、2人の少女がくしゃみをしていたのは、また別のお話。

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