No.13 王子の誕生パーティー 前編


ー月日は流れ、冬休み。私達は、レイの誕生パーティに行くため、ベニトアイトの王宮へ向かっていた。



「見てみてフロウ!!雪!雪!積もって欲しいわね!!」

「フィア、馬車の中で暴れないでほしいの。それに、フロウは寒いの嫌いなの。積もって欲しくないの。邪魔なの……。」

「えー。楽しいのに……。」

ぶぅ、と拗ねた演技をすると、フロウにため息をつかれた。

「それにしてもフィア。どういうつもりなの?あのクソガキのとこに行くなんて……いたっ!」

「クソガキ言わないの!」

またもや私が軽くチョップをし、今度はフロウが拗ねた様な演技をする。

実はこのパーティ、お父様とお母様は何故か休んだのだ。何故だろう……

そうこうしている間に、ベニトアイトの王宮に着いた様だ。

フロウにエスコートしてもらい馬車を出ると、一面雪が積もっていた。

王宮の煌びやかな飾りと合わさって、とても幻想的な景色になっている。


「フィア、早く入るの。」

「……あっ、うん。そうだね。」


ギィ、と扉を開くと、これまた大きなシャンデリアや、綺麗な飾り、大勢の人達。


「凄い……綺麗ね!」

「……センテュリオの方が凄いの……。いたっ。」

「こら。やめなさい……ん?」

「クソガキの挨拶が始まるの。」


「……まず、私の誕生日を祝いに来てくれた事、誠に感謝する。皆、今日は楽しんで行ってほしい。」


レイの挨拶に皆拍手をする。

拍手が鳴り終えたかと思えば、他のご令嬢、ご子息が挙ってレイの元へ向かう。挨拶だろう。

「……フロウ、私達も行きましょう。」

「分かったの。」



+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+


「ご機嫌よう。レイゼルア王子。お誕生日おめでとうございます。それでは。フロウ、行きますよ」

「……あっ。ちょっ……」

「なにか?」

「いや、なんでもない……。ありがとう。」



「ようやく終わった……並ぶの疲れた!!」

「……フィア、まだ淑女でいるの。ここは家じゃないの。」

「そうね……って……あれ……」

奥でチラリと見えた銀髪。あれって……

「あ、ちょっ……フィア?どうしたの!?」


フロウの声が聞こえず、追い掛けて見ると、その少年は奥で1人、ドリンクを飲んでいた。

どうして、ここにいるのだろう。

「……リンヴェル。」

私が声を出すとリンヴェルは驚いた表情で、こちらを見た。

「……フィア?」

「リンヴェル!久しぶりね!覚えていてくれて

嬉しいわ!」

「……忘れるわけないでしょ。……フィアこそ、覚えててくれたんだね。」

「当たり前よ!……それに、リンヴェルって貴族だったのね!全然気づかなかったわ!……そういえば良い服着てたような……?」

「……貴族……まぁ、貴族?うん。フィアも貴族だったんだね。」

「……あ、えっと……実は私、王族なのよ。センテュリオの王女、フィファナテなの。」

王族なら、なんて理由で絶交とかなるかな……なんて少し内心焦りながら、相手の様子を伺う。


「……そうなんだ。それじゃあ王女様って呼んだ方がいい?」

「いや!いいのよフィアのままで!私、堅苦しいの実は苦手なの。」

「そうなんだ。ねぇフィアー」「フィア!!こんなとこにいたんだな!本当、挨拶ってつかれ……」

「あぁレイ………レイ?」

様子がおかしい。また。顔は青ざめ、唇は震え、瞳は揺らいでいる。

「…………」

リンヴェルは黙ってレイの方を見ている。

「……お前まで、こいつを選ぶのか……俺を、捨てるのか……?」

「は?レイ、ちょっとそれってどういう……」

「……久しぶり、ですか。兄上。」

リンヴェルが口を開く。その口から発せられる言葉に、私は戸惑いを隠せない。

ー兄上?レイが、リンヴェルの?

どうして、レイはこんなに怯えたようになっているの?


「……リンヴェルって、まさか……」



「…僕は……リンヴェル・ベニトアイト……この国の、第2王子。」



「えー!?!?!?!?!?」



街で出会った綺麗な銀の少年リンヴェルは、まさかの隣国の第2王子で、レイの弟でした。

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