No.8.5 不思議な子 (リンヴェルside)


僕はリンヴェル。僕は病弱で、あんまり外には出られなかった。

それに、僕の髪は珍しい……というか、忌み色なんだって。父上は、僕を哀れんだ。そして謝った。誰もが僕の髪が兄上のような綺麗な色だったら、と言った。僕もそうだったらいいなと何度も何度も考えた。僕の髪の事は、隣の国の王様も知らなかった。勿論、国民も。



ある日、僕は家を抜け出して、隣国の街に出掛けた。

暫く1人で歩いていると、赤い髪をした女の子が変な男に絡まれている所を見かけた。

僕は男が女の子をぶとうとしていた時…

危ない。

僕は「こっち!早く!」と叫び、彼女の腕を引っ張り、素早く逃げた。体が勝手に動いた。


そして、男が僕らを見失い、どこかに行ったことを確認した。……近くで彼女の顔を見ると、凄く綺麗な顔をしていた。凄く可愛かった。

少女の名前はフィアと言った。赤いふわふわとした髪はとても艶々していて綺麗だった。年齢はきっと、僕より1つ年上だろう。

その時、女の子が口を開いた。

僕はまた色々言われるのだと、目をつむった。

……が、

「ー貴方のその髪、綺麗ね!触っても良いかしら!」

「……えっ?」

実際に放たれた言葉は予想外な言葉だった。

僕は情けない声がポロリと落ちた。

……驚いた。忌み色って言われ、蔑まれてきたこの髪が、綺麗だと彼女は言った。

「フィア。きみ今僕のこの髪が、綺麗って言ったの?」

「えっ?ええ、綺麗な銀色の髪じゃない!もっと誇って良いと思うわ!」

真っ直ぐな目だった。この子は嘘をついていない。とすぐに分かるような。

誇って良いのかな?これは。でも、彼女が言うなら……。

「ねぇフィア、君ってー……」

もしかして、僕の事を、知らないの?

言い終わる前に、フィアは保護者と思われる人に連れてかれてしまった。


僕は、忌み色って言われるこの髪が嫌で嫌で仕方なかった。メイド達も口では

「綺麗ですよ」と言うくせに、影で気味が悪い、化け物。と言っていたのを知っている。

でも、フィアは違った。他の人とは違う、ちゃんと、僕の目を真っ直ぐ見つめて、綺麗と言ってくれた。それだけで、少しこの髪が好きになれた。

きっと僕は、彼女に「一目惚れ」してしまったのだろう。


なんとか、彼女を手に入れたい。僕だけのものにしたい。宝石の様にキラキラした濃い桃色の彼女の瞳に、僕だけしか映らないようにしたい。他の男のものになんてさせない。待っててフィア。必ず、僕が手に入れて見せる。その瞳に僕は映っていなくても、君は、僕のものだ。

初対面でも、こんなに愛さずには居られない。大好きだ。フィア。必ず迎えに行くからね。

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