No.7 悪役王女と入学式
「つ、遂に今日、入学式……。」
ゆらゆらと揺れる馬車に乗りながら私は呟く。
そう。遂に、入学式だ。学園ではレイゼルアや他の攻略対象者との対面は免れない……。確かヒロインは高等部に上がってから来る。まだ時間はある。
「メ、メリア。大丈夫だよね?ちゃんと、寮暮らしに必要なもの、ちゃんとあるよね?」
「何回目ですかそれ。準備は万端でございます姫様。学園へは私も付いていける事になりましたし、まぁ大丈夫でしょう。」
「そ、そうよね……ねぇ、制服変じゃない!?大丈夫!?」
私はくるりと1周回ってみせた。ブレザーの後ろに着いているリボンがひらりと舞う。
制服は国で決まる。
この学園に通うのは、2国の人のみなので、
ベニトアイト出身は青。
センテュリオ出身は赤。
私はセンテュリオ出身なので赤。
「危ないので立たないで下さい。それも何回目ですか。大丈夫です。変じゃないです。」
「良かった…やっぱり……緊張するわね!」
「そうですね。」
ガタ、馬車が止まった。どうやら着いたようだ。
「い、行きましょうメリア!」
「はい。姫様。」
馬車を降り、学園を見上げる。
「おっきい……!」
「ですね。それでは、姫様は体育館の方へ向かって下さい。広いので、迷子にならないように。私は今から、説明会に行きます。入学式が終わる頃に体育館の扉のところで待ってますので、それでは。くれぐれも!迷子になりませんよう。」
「分かってるわ!大丈夫よ!皆についていけばいいのよ!」
そう自信満々に言い、メリアを見送ると、皆の向かっている場所へ向かう。
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「どうしよう。見失った。」
即ち、迷子だ。
「……とりあえずあの大きい建物に……!」
「おい。何してんだよ。」
「……いや、体育館の場所が分からなくて……って、レイゼルア王子……」
「その呼び方やめろって言っただろ?」
「そういう訳にもいかないのですよ」
「堅苦しいこと言うなって!」
「ちゃんとしたきまりですわ!」
「ハイハイ。で、体育館の場所わかんねーんだろ?こっちだよ。」
まさか、こんな時に遭遇するとは……なんと言うか……災難……?
あ、そうそう。私はレイゼルアに聞きたいことがあった。
「あの、王子。」
「んだよ」
「王子には、弟君がいらっしゃるのですか?」
ピク、とレイゼルアが反応する。
「……なんでそんな事聞くんだよ。」
振り返らずに、歩きながらそう問う。
「いや、誕生パーティーの時にお父様が話していたではありませんか。…第2王子は、具合が悪いのですか?」
「なぁ。やっぱりお前も……」
「あ、着きました。着きましたよ王子。ありがとうございました。で、なんですか?話遮っちゃってすいません。」
「なんでもない。入るぞ。もうすぐ入学式が始まる。」
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
「はー……疲れた……。」
長い入学式が終わり、その日は解散になった。
その後はメリアと合流し、部屋まで案内された。
部屋に着くと、私は端にあるベッドにダイブした。
「はしたないですよ姫様。」
「疲れたんだもの。学園長の話長すぎだわ。」
「学園長は意味の無い話をなさっているわけでは無いのですから。我慢して下さい。」
「30分くらい聞かされたのよ。同じような話を!」
「はいはい。」
「ちゃんと聞いてよー!!!」
「それはそうと姫様。明日は検査ですね。」
「そうなのよ。どんな精霊かな?」
「そもそも精霊が加護を与えてくれれば良いのですが。」
「そーね。って、物騒な事を言わないで頂戴!」
くす、とメリアが笑う。
……ゲームの中でのフィファナテはどんな加護を持っていたっけ?
……確か、闇の精霊だっけ。悪役令嬢に渡しちゃいけない加護よね……。
明日の検査で、衝撃の結果が出ることなんて、今の私は知る由もない。
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