第3話 華の都

彼はこんな話し方しない!

もっと優しい人だった!!



現実を受け止めきれない中、目の前にいる

青年の顔をよく見ると

薄紫色の目をしていた。


まつげは長く、前髪が目にかかるような髪型

なんだか大型犬のような…



「……綺麗…」


思わず声が漏れてしまった。


「はぁ?なんだって?」

眉間にしわを寄せ、不機嫌そうにする青年。

「まあ、なんでもいいけどよ。

こんなとこで寝てんじゃねぇよ。」


優しいのか、優しくないのか…

「は。はぁ…。」

私は、渋々起き上がった。


「あ、あのぉ…」


「あぁ?何だよ。」

また睨みつけるように私を見る。


(顔はそっくりだけど、絶対フジさんじゃない!信じたくない。)

そう思いながらも、恐る恐る青年に質問する。


「フ、フジさんじゃ、ない…ですよね…?」


………


少し沈黙が続いた後、青年が口を開く。


「フジだよ。」


ショックだった。

あの優しかったフジさん…。

王子様のような笑顔のフジさんが…


涙がポロポロこぼれてきた。

泣くつもりじゃないのに。


探していた人が変わり果てていたショックと

疲れも溜まって、出たのだろう。

でも、止めることができなかった。


「ちょっ、泣くんじゃねぇよ!!

うっとぉしい!」


私を見て、焦って慌てる『フジさん』

私はポロポロ涙が止まらなかった。


「ああ〜!ちぃちゃん女の子泣かせてんじゃ〜ん!」

突然、明るい声が『フジさん』の後ろから聞こえる。


「ちぃちゃんって呼ぶんじゃねぇ!

それに、俺は泣かしてねぇよ!!」


突然現れたのは、黄色い目をした少年。

またまた美少年で、

小さい顔にクリクリお目目。

八重歯が可愛い少年だ。


「…か、可愛い……」

驚き、いつの間にか涙は止まっていた。


「え〜っ、僕可愛いってさ!ちぃちゃん!

聞いた、聞いた!?」

嬉しそうに、八重歯を見せて笑う少年。


「……。」

不機嫌そうに、眉間にしわを寄せる

『フジさん』


全く状況が整理できない…。

とりあえず美青年と、美少年に囲まれて

私はこれからどうなるんだろう……。


そう思っていた矢先に、少年が口を開いた。

「こんにちは!可愛い迷子さんっ♩

僕は実里みさとだよっ!よろしくね♡」


「こ、こんにちは!実里くんっ」


ニコニコ八重歯を見せながら笑う実里くん。

愛くるしくって、本当に可愛い。

フサフサの茶色い髪の毛と、黄色い瞳が特徴だ。


「そして、こっちが『ちぃちゃん』だよぉ!」

ニコニコしながら、横の美青年を指す実里くん。


「ち、ちぃちゃん…!?」

名前に似合わない目つき…。


「ちぃちゃんって呼ぶなっつの!!」

実里くんを、ポカッと殴って怒っている青年。

「…千紘ちひろ。」


「え…?」


「チッ、俺の名前だよ!

千紘って言うんだよ!!」


目の前の青年は、急に大声で怒鳴りつけた。

「び、びっくりしたぁ…。大声出さないでよ!! あなた『フジさん』じゃなかったの!?」


「あぁ、フジだよ。」


「はぁ!?どういう事!?」


訳が分からなくなる。


「もぉ〜!ちぃちゃん!ちゃんと説明しなきゃ!実は……」

すぐに、実里くんが間に入ってくれた。


実里くんが居てよかったぁ…

千紘くんと2人だと、喧嘩するところだった。


そして、私は2人から沢山のことを聞いた。


フジくんと、千紘くんは

双子の兄弟という事。


ここが、現実世界とは

違う『世界』だと言う事。




この世界は、花々が生きる

『華の都』という世界だという事。

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