08.木野ミナト×大井悠 正月明けの①


 お正月休みも終わって、仕事が始まった1月。


 休みにかこつけて、ぐーたら出来た日々は、もう戻らない……戻らないのだ!


(悲しいなぁ……もう少し炬燵と仲良くしていたかった……)


 そんな訳で、久しぶりの出勤であることを噛み締めながら(噛み締めたくはないのだけど)ササッと働き始める準備を進めていく。


 PCの起動、よし。メモの準備、よし。あー、あー、電話に出る準備、よし。


 そんな風に一つ一つ確認しながら、チラ、と見えた後輩の席を見ると、何やら困り顔。


「悠ちゃん、なにかあった?」


「あ、先輩……いえ、大したことじゃないんですけど、いつも使っていたペンがどこか行ってしまったみたいで」


「あら、それは困ったねぇ……」


「いやほんと大したことじゃないんですけどね……。」


 なんて言いつつ、鞄の中を探したり、引き出しの中を探したり。


(夢の中へ行ってしまいそう。っていうのは、古すぎるかしら?)


 などと益体もつかない事を考えている私。


「とりあえず、これ貸してあげる」


「すいません……お借りします……」


「そんな大したことじゃないから」


 ぽんぽん、と悠ちゃんの頭を撫でちゃう。


「…………っ!」


 あ~、凄い癒される…………たまらんのぅ。






 と、その時、廊下から聞こえてきた声に、そろそろ始業の時間だと思い出す。


 できれば、もう少しだけ堪能していたかったのだけど。


(今日に限って早い課長の出勤が恨めしい)


 名残惜しい気持ちもありつつ、休み明け早々に怒られたくもない私は、そのまま席へと戻ろうと、最後に一撫でして離れる。




「あの、先輩!」


「ん?なに?」


「お昼、一緒に……食べませんか?」


 なぜか、顔を赤くした悠ちゃんのお誘いに


「……いいよ、あとで話そうね」


 と、こそっと答えて席へと戻るのでした。

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