第6話「桃太郎鬼とイワトビペンギン」

 「桃太郎、なんか話せ」


何時いつものやつだ、ここ吉備津彦きびつひこ神社に暮らすようなった温羅うらむすめチビも、最初こそ夜になるとどこぞに消え警戒してるようだったが、今や布団を桃太郎の部屋へみずら運び込む様になっていた。


「布団ちっちゃくないか?」

チビは布団から足が出るらしくその中で猫のように丸くなり顔だけ布団から出していた。

「いいからなんか話せ桃太郎」

(はあ)これ習慣になっちゃったな。

「昔々在るところに、お爺さんとお婆さんが住んでいました」

「むかしって、いつ?」

「ちょっと前だ、口をはさまず聞いていろ」

(…………)

「チビ、息はしろ」

「解った」

「お爺さんは山へ芝刈り…、小さな枝を集めに、お婆さんは川へ洗濯…、洗濯機は無い設定だから川へ洗濯に行きました」

時代考証じだいこうしようがあれだと面倒めんどうだな。

「すると川上かわかみから大きながどんぶらこ、どんぶらこ、と流れて来ました、お婆さんが家へと持ち帰りみるとタマゴの中から、もこもこの薄茶色うすちゃいろと白のそれはカワイイきじひなが産まれたのです」

「ねえ、おじーさんとおばーさんは、きじのおじーさんとおばーさん?」

「そうだ、オレが雉から聞いた話だ、まあカワイイ雛だったかたは疑問だけどな」

カワイイかどうかは問題ではない、もっと疑問に思うべき事が有るはずだ、雉の雛はそんなじゃ無い、頭の真ん中にこげちゃの筋の入った茶色のヒヨコみたいなやつだ、そしてその話をした白黒の黄色い眉毛ヤローはペンギン、ペンギンだ!

桃太郎はその現実を軽やかに無視しつつ話をつづける。

「そして雉はオレと出合い鬼退治をするのでした、めでたし、めでたし」

雉のお爺さんとお婆さんがどうこじらせた育て方したらそんな話しになるかは置いといて、おにのまえで鬼退治って…

「スゲー、チビも鬼退治する!」

世界はどんどん拗れていく、

この話「めでたし、めでたし」で終われるのか?



この物語はフィクションです実在の桃太郎、鬼、イワトビペンギンとは一切関係ありません。

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