第44話 妊娠したー。

それから1ヶ月後、

オーキッドの春の口紅と、

化粧水のCMが流れはじめた。


色とりどりのチューリップの花に

囲まれたジオンと、

顔は、カットされているものの

ジオンを抱き上げ、

顎下からしか写っていないが、

それでも慶一道と分かる。

カッコイイと思う。


「お似合いなカップル。」



「ま、良かったんじゃね﹏。」


珈琲を飲みながら呟く。

陽和のお気に入りの

月ドラの再放送の途中に流されたCM。

ジオンの大人っぽさの中に

チラチラ見える可愛さ、

世の男どもは、

このギャップにやられるんだろうな、料理が上手くても少々可愛くても彼女(ジオン)には勝てない。


「ちがう世界の話だ。」


そう呟きながら里芋をむく。

今日は、父親が煮物を

リクエストしてきた。

お煮しめとブリのお刺身に、茶碗蒸しガタガタと軽い音を立てて

蒸し器から湯気があがる。


湯気に向かって

忘れたい

忘れたい

忘れたい

あの時のように呪文をかける。

しかしハッキリとホテルで別れた時の慶一道の顔がしっかりと出てくる。


〃あーやっぱ初雪じゃないとダメかぁ

茶碗蒸しの湯気じゃ、むりだワ〃

陽和は、項垂れながら芋を剥く。


オーキッドの商品が

ボンボン売れていくのと比例して

母親の帰りも遅く父親が、

迎えに行く約束していたのに

インフルエンザにかかってしまった。


赤い顔をしてフラフラと帰ってきた。

父親を乗せて救急外来へと

車をはしらせる。

薬の投与でだいぶ落ち着いた父を

のせたまま、

母親の勤めるオーキッド本社へと

ハンドルをきる。

「ママ、会社着いたよ。」

陽和は恋子に連絡した。


「はいはーい。すぐ行くね。」

母親と一緒に出て来たのは・・・

「あ!꜀( ꜆-ࡇ-)꜆ウワ一緒に来んな!」

陽和は小声でブックサ


「陽和、副社長よ」


母親の声にハッとして車を、降りる。


そこには藍色のスーツを来て

立つ慶一道の姿があった。


「娘の陽和です。母が大変お世話にな ってい ます、父親がインフルエンザ なので これで失礼します。」


「あ、ああ・・・お大事に、そ、その・・・

おでこの傷は、」


バツと額を見せ

少し傷跡残りました。

結構強めに引っかかれたので、

血も結構出ました、

謝罪も無かったですね。

まあ、

盛りがついてらしたから分かんなかったん、で‼ショ、ウ、ネ﹏‼


ジオンさん、いい彼氏をお持ちですね。


全力で彼女をまもるんですもの、

〃愛〃されてますよね、

いやぁー羨ましい。

私の〃元〃彼氏なんて知らん振りです よ。じゃ!!」


ドアを💢バァンと閉めた。

父親を心配する母には

何も気づかれる事は無かった。


慶一道は陽和の傷が

そうでも無かった事に安堵したが、

怪我した陽和より

怪我をさせたジオンを

かばってしまった事を後悔した。


ジオンとの契約は社内反対の中、

副社長権限で打ち切りとなった。

色々な噂が飛び交う

オーキッド化粧品は売れに売れた。


2月14日、聖バレンタイン。

陽和は、最近蒼太と穂花が

付き合っていると穂花から聞いた。

イケメンには懲りたはずの穂花は

又イケメンへと、なびいて行ったんかい。



それはクリスマスイブ。

病院内にあるフードコートの端に

蒼太を見つけた。

彼は陽和と慶一道の事で

悩んでいたからずっと穂花は

彼の相談に乗っていた。


あの日、

初めて弁当を差し入れた日から

穂花は毎日弁当を届けた。

単純に蒼太が痩せていくのが

目に見えて分かったから、

お節介とは思ったが

放っておけなかった。


「穂花、いっもありがとう

弁当はもういいよ。と、

言いたいけど穂花の飯食ったら

他の飯くえなくなっちゃつたんだ。

ダメ・・・かな?」


穂花はニッコリと微笑みながら、

「私バツイチだょ。」


「この間、聞いたろう‼そう言ってたじゃん。イケメン苦手なんだよナ」

そう言うと髪の毛をボサボサと

なぜ回した。


「どう?ブサイクになったか?」


「デモ御曹司連合軍、ヌケれないでしょ。フフフ」

蒼太は穂花をジッと見て

「友達は大事だけど穂花は大切だよ。」

と言った。


「うちのお兄ちゃん、怖いよ。

チャラ男には特にね。」



「そうか‼ 何とか乗り切るよ。」


その日蒼太は、穂花のマンションから出て来なかった。


そしてバレンタインチョコ

武蔵野先生の紙袋には

沢山のチョコがてんこ盛り。

武蔵野先生(蒼太)の所にも山ずみのチョコがある。毎年の事だ。


てんこ盛りのチョコを

福祉施設に寄付する。

病院内には知られていないが

毎年の事だ。


蒼太は紙袋1つだけ残した。

穂花のチョコケーキをたべたいがために。

「ただいま〜」


「おかえり﹏♡」

「コレ、チョコ穂花のチョコケーキに 使って よ。」


エプロン姿の穂花が蒼太を出迎える。


「わぁーありがとう。

でも、高級チョコレートだよ。

勿体ない。」


「義理チョコだって‼」


蒼太は普通の態度で上着を脱いで

ソファに座った。


「今日は、ね・・・エットーまぁいいや。お風呂済ましてきて」


「うん、今日はオペあって、大変だっ たんだ。

あー疲れた!」


蒼太が浴室に消えるのを

確かめた穂花は陽和に電話する。


「陽和ー言えなかったぁ﹏どうしょ

う。」


俺はな〜んかいつもとちがう穂花が、気になり、リビングへと戻った。

すると・・・聞こえてきたのは、


「今2ヶ月何だけど悪阻も無いの!

言わなきゃ行けないんだけど、

別れ話になったら怖いじゃん。」


「そ、そ、そーなの‼」


「まだ彼は独身でいたいと思うの

うん。勿論産むよ、一人でも育てる。・・・もしダメって言われたら、

別れる。だって、この子は蒼太の子

供だもん。」



∑๑ºдº๑!!マジカヨヨヨ!!!



俺はそろ〜リそろ〜リと浴室に帰った。

ドキドキ、ドキドキ、ドキドキ


「俺がァ…ち、ち、父親?ち、父親?

まじで、まじでまじでー‼

どうすんの、どうすんの、どうすん

の・・・>_<。?


父親ってお父ちゃんだよ、パパだよ。


๑>▽<嬉しいよー御曹司軍団一番バッター、武蔵野蒼太、投げましたーカキーンコウノトリにあたりましたー

どうした事でしょーw

子供が、出来ましたー。ヤッター

ホームラーン」


暫く風呂で暴れたあと


「もしもし、じーさん?オレオレ

ババアーさんいますか?」

その発言で、

武蔵野 航大はムカ﹏

自分はジーさんと言われても、

美代をババアーとは許せん💢


「 ババアーさん?誰のこと?マジで言って る ?ならぶっ飛ばされるぞ‼良いのか!」


「ババアにバーさんって、何が悪いん だ よ。」


「今から住所言うからばーさん、じーさん 箸握って来い。 美味い鍋があるから。 あ‼手土産はレモンとか柑橘系な‼忘れんなよじーさん。」


あー忙しくなった、なった。

ブクブクブク ぷっはぁ


ヨッシャャャア

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