第43話 陽和の記憶障害のわけ。
2人は高級ホテルの階段を降りてくる。
野次馬も沢山集まりだした。
慶一道がジオンを抱き上げた時
ジオンの笑顔が閉ざされた柔らかい
陽和のリボンを切った。
陽和の頭の中でパーアニーホテルで
ジオンを抱き上げキスをしたシーンが、 突然目の前の出来事のように甦る。
まるでスローモーションのように
慶一道の微笑み、
ジオンの瞼が閉じた時ゆっくりと
触れる2つの唇。
あのキスは陽和の心を食いちぎった
悪魔の様な慶一道の笑い。
赤いジオンの唇を何回も吸い付き
求め、陽和の心はズタボロになった。
残酷な悪魔のストロベリーKiss
長く見せつけるように・・・
バカにしたように笑っていた
慶一道の上から見下ろすような目。
慶一道の見下したような目、
そして何より熱い抱擁。
陽和は、耐えられない程の
屈辱をうけた。
衝撃で打ちのめされた。
誕生日を祝ってもらえると
ノコノコ出かけた呑気な猫ちゃんは、仕掛けられた罠に
自分から飛び込んだ様なもの。
自分が可笑しいやら、情けないやら。
そう、その時陽和は耐えられず、
会場を出たんだった。
一時、感情も無くなり
何をしていたのか憶えていない。
だいぶ座って居たのかもしれない。
白い雪が見えた時、ふとDVDでみた
韓国映画を思い出した。
韓国映画の真似をしてみる。
その時の陽和にはその映画の真似が
何よりの頼りになった。
神様は、いる・・・
お願いを叶えてくれる。
そう思った。
日本庭園の庭に降る初雪を見て
願いをかけた。
白い雪なら、汚い思い出を真っ白に
おおってくれる。
跡形も無くけしてくれる。
緑の苔が薄く消えていくように。
泣かないで陽和
直ぐ忘れられるから・・・
頬をツーっと伝う涙を拭きながら
自分は慶一道が好きだったんだと
気づかされた。
韓国では無いけど想いは同じ。
お願いします・・・忘れたい。
初雪に願いをかけた。
白い粉雪が牡丹雪に変わる時に・・・
慶一道の顔を、姿を忘れますように。
アイツの顔はみたくない。
アイツの顔を記憶から消して・・・
思い出したく無い
消えて
消えて
消えて
忘れたい。
忘れたい。
忘れたい。
自分に暗示をかけるように
何回もつぶやいた
忘れたい・・と。
慶一道を忘れたいの。
私の誕生日の神様からの
贈り物として、慶一道を忘れさせて
ください。
せめて顔を忘れたいの、出来たら
慶一道がどんな姿をしてたのかを、
性格を、私に笑いかけた優しい顔も
何もかも要らない。
思い出した時あんなに繋がらなかった慶一道の顔がピタッと繋がった。
あの時の慶一道の意地悪じみた顔を、陽和を見て薄ら笑いをした顔を
・・・思い出した。
気持ち悪くなるほどに。
その事を慶一道は謝っていたんだと、ある程度は理解していたが、
本当に謝っていたのはこんな、
心が壊れるような
意地悪をした事だと、納得した。
あの日の記憶が抜け落ちていた。
「あんな馬鹿意味無くない?」
急に甦った記憶に未練も何も
すっかり消えていた。
あの日の自分はしっかりと
慶一道に恋していたんだと
今更ながら自分が痛い。
「あんな奴、こっちからお断り。」
夜、ホテルのラウンジに
ジオンと慶一道が話し込んでいた。
食事をした後スタッフとの
ミーティングの待ち時間なんだろうか?
〃まさかホテルまで一緒とは?〃
慶一道がチラチラ気にしているのを見てジオンは何かを感じたんだろう。
椅子を立って陽和の方へ歩いて来た。
「こんばんは。よく会うわね、慶一道 のストーカーかしら?」
甘く整った顔は男心をくすぐるのだろう、それなりのオーラがある。
「なんの事ですか?、私は仕事で来て います。」
「嘘、」
「日本語、上手いですね。
彼にベッドで習ったんですか?」
「ちがうわ、元彼が日本人なの‼」
๑`ȏ´๑💥💥💢
💥`皿´キーッ!!
「へぇ〜、今彼も日本人なんです
ね。日本人が好きなの?」
陽和はムカついたのか声を荒らげた!
「私、慶一道が好きなの‼ 」
ジオンのピンクの唇はハッキリと
そう言い放った。
ジオンは慶一道を、
好きになっていた。
だから度々現れる陽和が気になり
又動揺する慶一道も気になっていた。
「貴方、慶一道とは何処まで行った
の?」
ジオンは腕を組威圧感真っ直ぐに聞いて来た。
「は?何処まで・・・あんたと、同じにする な!」
ガタツ
咄嗟に陽和は立ち上がりジオンを睨みつけた。慌てて、慶一道が駆け寄りジオンをなだめ始めた。そんな様子を見た陽和は、
「バカバカしい。
こんな所まで来てヤキモチか
トップモデルが笑わせる。」
陽和はバシッと言い放つ!
その言葉に慶一道が唖然とする。
「慶一道達にとっては、身体で繋ぎ止 める程、大事な人かも知れないけ
ど、人をストーカー扱いするバーカ
な女‼甘やかし過ぎでしょ、笑。
エロ カップル」
《 `皿´キーッ!!なによー》
ジオンは陽和に掴みかかってきた、
陽和も応戦する、
慶一道が割り込んで来て
ジオンをかばい、ジオンを抱きしめた。
慶一道は体全部を使って、
振り返り陽和を睨んで言った。
「顔はジオンの商品だ、
傷を付けるの は許さない。」
慶一道はジオンを抱きしめる事で、
ジオンを陽和から守っていた。
陽和は、
「私から掴みかかってないわ、
この女が髪をひいたのよ。
自己防衛の、何が悪いか教えて欲し
い。
あなた達にとっては、大事な女かも
だけど・・・
私にとっては、嫌な女。
今夜もお楽しみなんでしょ。
自分の女なら甘やかさないで
“躾なさい“よ‼」
陽和の頬を赤い血がつーっと流れた。
陽和はそう呟き、
おでこについた引っ掻き傷を
ハンカチで拭いた。
「ジオンに付けられた傷は、許せ
ないん だ。私に付けられた傷は、
どうなんですか?」
〃 アッ‼〃
慶一道はその傷を見て絶句した。
「ジオン、彼女には傷つけてないわ、
私に付けられた傷は許されるのよ
ね、私も病院関係者よ、人を怪我
させたりしない。
爪だって、2日に一回は切ってる。
もう二度と私に近寄るな‼
アンタも、この女も!いいよね!」
静かに慶一道の連絡先をその場で消した。
「ほら、慶一道も消して、
これでお互い知らない人よ。
でないとジオンに掴みかかるかもよ。」
そう言ってその場を去った。
呆然と立ち尽くす慶一道は
何をどうしていいのか分からず
アタフタしていた。
ジオンだけが、
してやったリとニンマリ笑っていた。
陽和はほとほと、
慶一道に愛想が尽きていた
そして思った。
アイツは何かあっても
私を守ってくれない。
全国民の前で、
「僕が全力で彼女をまもります。」
といわれたお方が、羨ましい。
「全、チャラ男よ、見習え。」
慶一道は、あのお方の足元にも
及ばないだろう。
そう思い次の朝早くドスドスドスと
ホテルを後にした。
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